ソフトウェア開発を手がけるサイボウズでは、青野慶久社長が大きな事業方針を決め、月1回のミーティングで全社員が情報を共有する。そして、事業方針を現場でどう実現するかは、リーダークラスが考える。パートナー営業部で、メーカー系の販売パートナーを担当する清田和敏さんは、3人の部下を率いている。「優しくて、部下に慕われる」というのが、清田さんの社内評価だ。独自のマネジメントの仕方について語ってもらった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
サイボウズ 清田 和敏さん
●profile..........清田 和敏(きよた かずとし)
2002年、大学卒業後、法人向けITソリューションベンダーに入社。プログラマやネットワークエンジニアを務める。その後、自動車メーカーの情報システム部門への転職を経て、08年、サイボウズに入社し、SE部に配属。11年、パートナー営業部に異動し、メーカー系パートナーを担当するチームのリーダーに就任。
●所属..........営業本部
パートナー営業部
主任
●担当する商材.......... 業務アプリケーション構築クラウド 「kintone」
●訪問するお客様.......... 日立製作所など、販売パートナーである大手メーカー
●掲げるミッション.......... パートナー販売を活性化し、クラウド事業を成長させる
●部下を率いるコツ.......... ガードを下げ、聞きやすい雰囲気をつくる
●リードする部下.......... 3人
まず、やらせてみて困ったときは助け舟
僕は、穏やかな性格で、部下を叱るのが苦手だ。トラブルが起きて部下が困ったときに、すっと入ってヘルプし、部下を立てることを心がけている。人は叱られると萎縮したり、反発したりするので、失敗の尻拭いをしてやったほうがマネジメント上、効果的だと思う。部下の考えを否定することはない。まず、やらせてみる。失敗したら、しっかりバックアップする。これが、僕の営業リーダーとしての哲学だ。
先日、仕事を任せた部下のミスで、2000ユーザー規模の大型案件でトラブルが起きた。かなりの金額が絡むこともあって、部下はお客様と販売パートナーに相当叱られ、その対応に頭を抱えていた。そのとき、僕が間に入って、社内エンジニアや販売パートナーといろいろ調整しながら、何とか解決にこぎつけた。
「対応がぬるい」「お前のやり方は違うぞ」──。飲み会などで先輩リーダーに自分のマネジメントスタイルを話すと、こう指摘されることが多い。部下たちにも「早く教えてもらえたら……」と思われるときがあるかもしれない。確かに、僕のやり方では、結果が出るまで時間がかかったり、トラブルが発生しやすいというデメリットがある。しかし、責任をもって自由に仕事させることで部下が自信をつける。彼らの成長につながるというメリットのほうが大きいと思う。かつて、3年ほど一緒に仕事をした人に「清田のやり方もありだね」といわれて、励ましになった。叱るにしても、ヘルプするにしても、結局、部下への気持ちが入っているかどうかが大切だと考えている。
サイボウズは、従業員数が400人弱で、とても若い会社だ。今年だけでも、約20人の新卒社員が入ってきた。若い社員は、モチベーションが高い反面、細かいことについて説明を求めてくる。いわゆる「ゆとり世代」だからなのか、真剣さの現れなのかはわからないが、僕としては「とりあえず動けよ」と言いたいときがある。
当社は、現在、青野社長がクラウド事業の拡大に強い思いを込めて、開発基盤「kintone」など、クラウド製品をパートナーにもっとたくさん販売していただくことに力を入れている。僕のチームは、日立など、メーカー系のパートナーを担当しているので、なかなかハードルが高い。なぜなら、メーカー系はシステム構築で収益を上げる構造なので、構築がほとんど不要のクラウドの取り扱いに消極的だからだ。そんななかにあって、日ごろ、どういう工夫をしているかについて、ウェブで「つづき」をお話ししたいと思う。
[紙面のつづき]「一歩先を走る営業活動」を部下に見せる
サイボウズは直接販売に力を入れてきたので、社内には「受注して終わり」という考えが根づいている。しかし、とくにメーカー系のパートナーに当社のクラウド製品をもっと積極的に販売していただくためには、パートナー向けのサポートを拡充させることが重要だと思う。
この8月、一人の新メンバーが僕のチームに入ってきた。彼と初夏に開いた会社のバーベキュー会でチームの活動についていろいろ聞いてきて、旧部署からの異動を希望していた。ところが、それがかなってチームに入ったはいいが、提案がなかなか受注につながらないなど、最初はうまくいかなかった。担当するパートナーが業績が振るわないこともあって、積極的に外に出て営業活動に励んでも全然売り上げにつながらない状況が続いた。おまけに、お客様やパートナーからのクレームで、トラブル対応も多かった。
「自分のやり方が正しいのか」と悩む彼の姿からは、つらさが伝わってきた。そこで、これまでパートナーに任せていた案件のクロージングをサイボウズ側でカバーすること、すなわちパートナーへの支援を受注につなげる営業方法を試してみよう、と提案した。部下はその提案に乗り、全部一人で準備を整え、懸命にクロージングのサポートに取り組んだ。パートナーは「そこまでしてくれるのか」と驚きながら部下の努力を評価して、ようやく注文を決めていただいた。これからも、この部下が経験を生かして、パートナー支援を武器に実績を伸ばしてくれることを期待している。
サイボウズは開発中心の会社で、マーケティング活動も活発だ。その一方で、営業は、どちらかといえば地味なイメージがある。リーダーとして、営業活動がもう少し目立つようにしたい。
実は、僕は営業に配属される前に、長年、エンジニアとしてのキャリアを積んできた。もともと前職でサイボウズ製品の運用に携わり、使いやすさに憧れて転職を決めたという経緯がある。大げさに聞こえるかもしれないが、僕はサイボウズという会社がとても好きだ。タバコのライターやスマートフォンの保護ケースをサイボウズのコーポレートカラーである青で揃え、友人にいつも自慢している。最近は、休日に自宅で製品の機能を紹介するサイトをつくり、サイボウズ製品のよさを違う角度からアピールしている。
こうして、常に一歩先を走る営業活動を見せることで部下たちに刺激を与え、パートナー販売の活性化を目指している。

東京・下北沢の古着屋で購入したレザーバッグ。清田さんは、学生の頃から古着に嵌まっていて、鞄の「アンティークな感じ」がお気に入りだそうだ。