中堅規模のシステムインテグレータ(SIer)である日本システムウエア(NSW)は、受託開発からの脱出を目指し、サービス事業へのシフト転換を急いでいる。プロダクトソリューション事業本部の営業部門で、8人の部下を率いる佐藤正芳さんは、売り上げの数値だけではなく、新規商材の開発に貢献した活動も評価する制度を導入し、サービスづくりを加速させている。「みんなで全力を挙げてがんばろう」という方針を掲げて失敗した経験をもつ佐藤さん。今は、部下たちの「小さな成功」こそを重視して、チームの活動を統括している。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
[語る人]
日本システムウエア 佐藤正芳さん
●profile..........佐藤 正芳(さとう まさよし)
1998年、大学卒業後、日本システムウエアに入社。公共案件を手がける部門で営業を担当。その後、プロダクトソリューション事業本部に異動し、組み込みソフトウェアなどの営業に携わる。2010年、第一営業部のマネージャーに就任し、11年から副部長を務めている。
●所属..........プロダクトソリューション事業本部
営業統括部 第一営業部
副部長
●担当する商材.......... モバイルアプリケーションなど
●訪問するお客様.......... モバイル端末メーカーや車載機器メーカー
●掲げるミッション.......... 顧客のニーズに合った新商材を開発し、受託開発からサービス事業への切り替えを実行する
●やり甲斐.......... 自分のサービスが市場に広がり、国内外の人々に使われていることを実感したときの充実感
●部下を率いるコツ.......... 任せるべきものは任せる
●リードする部下.......... 8人
評価制度を一新してサービスづくりを加速
3年ほど前に、モバイルアプリなどを商材にする第一営業部のマネージャーに就任したばかりのときの経験だ。一日、最低でも2社のお客様を訪問し、バリバリの提案活動をしている自分の営業スタイルを部下たちにも見習ってもらおうと考えていた。そして、「みんなで全力を挙げてがんばろう」という方針を掲げて、全員がとにかく現場に出てお客様に会うことを促した。ところが、これが大失敗だった。訪問件数を増やしたことで、部下たちが疲弊してモチベーションが下がり、その影響で、売り上げが振るわなくなってしまったのだ。
私が率いるチームは、20代の若いメンバーと、40~50代と私より年上のベテランで構成されている。こうした年齢差もあって、「みんなでこうしろ」ではなく、上司として一人ひとりの立場に立って、各自に適切な目標を設定することが大切だということに気づいた。例えば、ベテランの営業は、長年のノウハウを生かして、それほど多くの訪問をこなさくても、売り上げを稼ぐことができる。私は当時の失敗の経験から、部下の「小さな成功」を支えれば、結果としてビジネスの拡大につながることを学んだ。今は、定期的に部下たちと面接し、実現できる目標設定を心がけている。
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ソフトウェアの受託開発の需要が日増しに減るなかにあって、当社は独自のサービスを開発してお客様に能動的に提案することを命題としている。しかし、開発部隊が主体となってサービスの商材を開発しても、ニーズに合わなければ、お客様に受け入れていただけない。だから、現場にいる営業メンバーがお客様の課題を念入りに聞き出して、市場のニーズを開発に反映させる必要がある。私は、営業メンバーがサービスづくりに取り組むことを促すために、評価制度を一新することを会社に提案した。
従来の制度では、オーソドックスな評価方式で、どれだけ案件を受注し、売り上げを上げたか、ということだけが評価の基準になっていた。それに対して、新しい制度では、数値以外のことも評価に入れるようにしている。例えば、自分で新商材を考えてお客様にヒアリングする活動も、すぐには売り上げにつながらなくても、必ず評価する。新制度の成果として、従来型携帯電話用のアプリを自動的にAndroidに対応させるツールなどの新商材が生まれた。
部下に常にアドバイスするのは「自分を売りなさい」ということだ。お客様と深い信頼関係を築き、「お客様は製品ではなく、あなたを買う」というマインドを根づかせたいと思っている。
[紙面のつづき]お客様とタッグを組んで部下を育てる
私の部署は、組み込みソフトウェアを主にモバイル端末メーカーや車載機器メーカーに提供している。こうしたお客様は、ここ数年の間、コスト削減のために、製造現場を人件費が日本より安い中国に移してきた。お客様のそうした動きを受けて、われわれも北京に現地法人のNSW中国を立ち上げ、お客様をサポートする開発部隊を中国に移している。その影響で、私がリードする営業チームのメンバーが中国に出張し、現地で商談を行う機会が増えている。
私も以前、中国での営業活動に携わっていたが、2011年に副部長に就任してからは部下たちに任せるようにしている。少し前の話になるけれど、案件の引き継ぎで、部下と中国に出張した。当社にとって非常に大きなお客様を訪問し、新しい担当者として部下を紹介して、引き続き当社にご注文いただくようお願いした。私は、うまくいくだろうかという不安を抱えながら、商談の主役を部下に任せた、これまで案件規模の小さなお客様しか担当していなかった部下に、大型案件の重い責任を感じさせるようにしたのだ。
大型案件のお客様を相手にする商談は、営業の一つひとつの発言が大きな影響力をもち、受注を左右する。部下は、その場の雰囲気からそれを実感したようで、お客様が話をまじめに聞き、自分の発言では慎重に言葉を選んだ。私は部下の対応を見て、「これなら任せることができる」と確信した。
それでも、担当の引き継ぎはなかなか難しい。お客様は、どうしても新しい担当者を前の担当者と比較して、不満に感じるものだからだ。とくに今回の場合は、ベテランの私から若手に変わったので、少し時間がたつと、お客様から「対応が悪くなった」と言われた。お客様の満足度は重視しなければならないが、しかし、副部長の私が現場に戻るわけにはいかない。
そこで考えたのが、「部下をお客様に育ててもらう」ということだった。お客様に「懸命に改善に努めるので、対応のどこが悪いかを指摘し、彼を押し上げてください」とお願いした。私も、自分の経験からそのお客様がどんなことを大切にしているか、営業に対して何を求めているかを教えた。そう、お客様とタッグを組んで、部下の成長につなげたのだ。
ビジネスの領域が中国に広がり、営業は国内だけではなく、海外でも活躍することが求められている。私は、自分たちの製品が世界の人々に使われるという喜びを伝えることで、部下たちの海外に出るモチベーションを高め、グローバルで対応できる営業チームをつくりたい。

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