ITコーディネータ(ITC)の私は、アパレル業界を専門領域として、ITを活用した経営を支援している。アパレル業界のIT化は他業界と比べて遅れているが、経営者の意識次第では、ITを経営にうまく活用できると感じている。
現在、私が顧問を務めているアパレル会社がその典型例だと思う。その企業の支援を開始したのはおよそ2年半前だが、当時は本社の従業員のスケジュール管理や会議室の予約をホワイトボードに書き込んでいたり、縫製指示書という型紙の説明書を紙の台帳で管理していたりと、IT化が著しく遅れていた。しかし、グループウェアの導入や縫製指示書の電子化などを行い、業務の効率化を実現してからは、経営者の意識が高まって、「新しいIT技術で、当社でも活用できそうなものがあったらすぐに教えてほしい」と積極的になった。今では、クラウドストレージを導入して、店舗の売上状況をその日のうちに経営者が把握できる体制を敷き、店舗ではデジタルサイネージを導入して、来客に魅力的に洋服をアピールするなど、最先端のIT活用が進んでいる。
とくに、複数の店舗をもつアパレルメーカーにとって、本社と店舗との情報共有を実現するクラウドサービスはありがたい。従来、こうした拠点間での通信ができるのは、サーバーをホスティングとしてDC事業者に預けるだけの資金力がある大手アパレルメーカーに限られていた。しかし、安価に利用できるクラウドサービスの登場で、中小アパレルメーカーのIT活用へのハードルが下がってきた。今後、アパレル業のIT化はさらに進むだろう。
私は、現在、顧問先の売り上げを伸ばすためにBIツールの導入を勧めている。しかし、現在あるBIツールは、どれも数字で分析するもので、アパレル業にとっては使いづらい。洋服のデザインや色、サイズを見ながら分析できるアパレルに特化したBIツールがほしい。アパレル業のIT活用が進んで、そこに目をつけたITベンダーが有力な商材を開発してくれることを期待している。(談)(真鍋武)