「人が財産だから、育てなければ」。そんなことを言う人が多いが、実際に現場で人材育成を徹底的に行う人はどのくらいいるのだろうか。東芝ソリューションで、航空会社向けの営業を担当するチームを統括する吉田昭二さんは、人材を育てるリーダーの鑑だ。野球部のキャプテンとして身をもって育成の大切さを知り、2013年、チームに新人が入ったのを機に、その新人をきちんと育てる覚悟を決めた。そして、フレッシュマンのパワーを引き出し、そのことがベテランのメンバーの積極的な動きにつながった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
東芝ソリューション 吉田昭二さん
●profile..........吉田 昭二(よしだ しょうじ)
1993年、東芝に入社。東芝府中工場の総務部に配属され、東芝府中硬式野球部に入部。7シーズン在籍し、99年の都市対抗野球大会を最後に現役を引退。99年10月、流通・放送・金融システム事業部に配属され、エアライン担当営業として社業に専念する。2003年の東芝ソリューションの設立と同時に所属。11年7月から現職。
●所属..........流通・金融ソリューション事業部
流通・運輸ソリューション営業部
流通・運輸ソリューション営業第四担当
グループ長
●担当する商材.......... エアライン向けシステム開発
●訪問するお客様..........航空会社
●掲げるミッション.......... ITを駆使し、航空会社の課題を解決するソリューション提案を実現
●やり甲斐.......... 全員で受注の喜びを共有すること
●部下を率いるコツ.......... 常にチャレンジ精神を刺激する
●リードする部下.......... 5人
野球で鍛錬、新人育成に力を注ぐ
小学生の頃から野球に夢中になって、1993年に東芝に入社してからも、会社の野球部で7シーズン、キャプテンを務めた。午前中は総務部で仕事をこなし、午後は練習に没頭する。そういう日々の繰り返しだった。だから、99年に営業担当になったときは、まったくのセールスの新人だった。しかし、懸命に営業のノウハウを吸収しつつ、先輩たちに追いつこうと努力した。野球部で鍛えたメンバー育成の腕を発揮して、2011年、航空会社にシステムを提案する営業チームのリーダーに抜擢された。
チームのメンバーは、平均年齢が40歳を超えている。全員、営業のプロで、コンスタントに実績を上げているが、私は部署の将来を担う人材が必要だと考え、「30歳前後の若いメンバーを入れてもらえないか」と上司に相談をもちかけた。そこそこの経験を積んだ新メンバーを入れることで、チームの若返りを図る。私はそれを狙っていたのだが、配属されたのは、よりによって、大学を出たばかりの新卒社員。「これは育てるのが大変だな」と、最初は懸念しながらも、きちんと育成して一日も早く戦力になるよう、支援する覚悟を決めた。そして、昨年の春、その彼を迎えた。
非常に優秀な若者で、ビジネスに関する理解も速い。私はここ1年の間、彼を私の顧客訪問に同行させ、現場で営業の基礎をたたき込んだ。お客様の表情やメモを取るペンの動きから、こちらの話のどの部分に関心があるかを読み取るなど、相手の変化を感じ取る感覚を身につけさせた。新人が成長し、少しずつ一人で動くようになるにつれ、そのパワーが他のメンバーにいい影響を及ぼすようになってきた。
メンバーは、中堅社員ということもあって、実はこれまで席にいることが多かった。こちらから行動数を上げることを促しても、なかなか動いてくれなかったのだ。ところが、「頑張っている新人にいい見本をみせたい」という心理が働いて、メンバーたちが自分の行動をより意識するようになった。新しい切り口の提案に挑んでみることに消極的だったメンバーの一人も、どんどん新鮮な発想を出してお客様を訪問するようになった。おかげで、これまでにない規模の案件を受注し、人事部から「よくやった」と表彰された。本人はもちろん喜んだし、上司の私も、予想を上回る彼の成長ぶりを目の当たりにして、とてもうれしかった。
営業マンとしてのスタートが遅れた自分だからこそ、新人の育成には向いているのかもしれない。
[紙面のつづき]経営層向け提案に挑戦、製品の「見せ方」を磨いて部下を走らせる
売り上げを伸ばして会社の成長に貢献するために、当部署として明日はどういう動きをするべきなのか。チャレンジ精神をもって、新しいビジネスにつながる営業作戦を毎日考えている。そして、まずリーダーの私がそれを実践して、成功パターンを明確にしたうえで、部下たちを動かしていく。
このところ取り組んでいるのは、お客様の経営層へのアプローチだ。私のチームが担当する航空会社は、LCC(格安航空会社)の台頭などによって価格競争が激しくなり、コスト削減や顧客向けサービスの改善・拡充が喫緊の課題になっている。私はこれまで築いてきた人脈をフルに活用して、お客様のトップ層の方を訪問して、課題を解決するITを経営ツールとして訴求するという新たなかたちの提案を試みている。
提案先が経営層になると、製品はそのものは情報システム部門に提案してきたものと同じでも、見せ方を変える必要がある。要するに、従来のように「この製品はこんな機能や特徴があります」とうたうのではなく、「導入によって、こんな新しいサービスをつくることができ、○○の期間で投資を回収できます」というふうに、数字を前面に押し出して、ROI(投資利益率)を説明することが提案の肝になるわけだ。
IT活用によって、お客様のお客様を幸せにする――。私は、当社が提供するITインフラの上で動くサービスを利用するエンドユーザーを念頭に置きながら、経営層向けの営業活動を進めていきたい。現在は、まだ私一人でこうした提案を行っているが、近いうちに部下にも走り出してもらい、チーム全体で新しい受注の獲得に力を入れたいと思う。
もう一つ、営業リーダーとして重視しているのは、グローバル人材の育成だ。航空会社が手がける事業は国境を越えたグローバルビジネスなので、当社もこれまで以上に視野を広げ、グローバル基準で提案を行うことが欠かせない。昨年、優秀な新人がチームに入ってきた。英語の試験を受けさせるなどして、彼を当社の明日を担うグローバル人材に育てたい。

大口の得意先ごとにそれぞれの名刺入れを用意し、名刺の管理はバッチリ。合計4個のケースを利用している。ブランドはボッテガ・ヴェネタ。