メールの誤送信を防ぐツールを展開するトランスウエアは、クラウド商材に力を注いでいる。飛び込み営業で販売代理店を開拓して、クラウド商材の販売網をつくり上げたのは、法人営業部の課長を務める松井克さんだ。「一プレゼン一笑い」を掲げ、部下たちに「必ず一度、笑いを取る」プレゼンテーションをさせることによって、販社に聞く耳をもってもらうようにして、クラウド商材の拡販につなげている。4人兄弟の末っ子で、団結を大切にする松井さん。部下が力を発揮することができるよう、明るいチームづくりを心がけている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
トランスウエア 松井 克さん
●profile..........松井 克(まつい まさる)
IT以外の業界で、9年間、営業職を務めた後、2008年にトランスウエアに入社。法人営業部でパートナー/エンドユーザー向けのセールスを担当。メール誤送信防止ツールなど担当商材のクラウド化を営業としてリードし、クラウド製品の販売体制を一人でつくり上げた。12年10月に、法人営業部の課長に就任。
●所属..........営業本部
法人営業部
課長
●担当する商材.......... Google Apps/Office 365と連携したクラウド型のメール誤送信対策とメールアーカイブ
●訪問するお客様.......... Google Apps/Office 365のリセラーやユーザー企業
●掲げるミッション.......... クラウド商材の売上比率を引き上げること
●やり甲斐.......... 新しい分野を開拓し、そこで成果を出す
●部下を率いるコツ.......... 全員が楽しく、生き生きと仕事ができる環境をつくること
●リードする部下.......... 4人
明るいチームが受注に直結
クラウド商材の販売代理店の開拓は、最初は僕一人でやってきた。市場に数多くのメール誤送信防止ツールが出回っているなかで、先方にいかに聞く耳をもってもらうか。製品をおもしろおかしくデモンストレーションすることによって、販社に好印象を抱いてもらうよう工夫している。例えば、会社資料を送信するつもりのメール添付に、僕の家族の写真を入れてデモを見せて、「あっ、間違えましたね」と言って、先方を笑わせる。それと同時に誤送信を防ぐツールの必要性をアピールするといった具合だ。
販売体制が整い、クラウド事業が軌道に乗るにつれ、一人で活動することに限界を感じた。上司に相談して、若手のメンバーをチームに入れてもらって、自分は部下を管理しつつ、前線で戦うプレイングマネージャーになった。
部下は今、4人いる。全員、社会人になって2~3年目の若手だ。フレッシュなマインドをもって、やる気満々で営業に励んでくれている。彼らに叩き込んでいるのは、商談の過程で必ず一度笑いを取る「一プレゼン一笑い」を心がけることである。といっても、そう簡単ではない。一人、とてもまじめな部下がいて、最初は「先方が笑ってくれない。どうしよう」と、落ち込んでいた。しかし、経験を積み重ねることで、すっかり慣れてきて、「それって、オレのネタだろ……」と、少し腹立たしく思いながらも、部下の成長をうれしく思うことがある。
社内でも、明るい雰囲気づくりに努めている。チームメンバーと積極的に会話することを重視し、一日に一回、大爆笑を起こすために、おもしろい話を仕込む。当社はソフトウェアの開発会社だ。僕が入社したときに、エンジニアがパソコンに向かって、黙々とプログラミングの作業を行い、「雑談しちゃダメだ」というような雰囲気が漂っていた。「松井さんのチームはうるさい」といわれることもあるが、堅苦しい雰囲気を打ち破り、部下たちからは「毎日、会社が楽しみ」という声も聞かれるようになったので、生き生きと仕事する環境をつくることができたと自負している。
新人の頃、販売会社でコピー機の飛び込み営業に携わった。その会社は、上司が部下をけなすなど、雰囲気が暗くて、4人兄弟の末っ子で団結心を大切にする僕には、まったく肌が合わなかった。「笑う門には福来る」のことわざがある。部下が楽しく仕事ができるようなチームにすることが、売り上げの拡大につながると確信している。
[紙面のつづき]相手を味方につける力を磨いて、販社との関係を構築
クラウド型のメール誤送信ツールやメールアーカイブを担当する僕のチームは、販売代理店のほかに、エンドユーザーの企業も訪問して製品を訴求している。部下たちに「常に10個はカバンに入れて持っているように」と言っているのは、箱に当社のロゴやイメージキャラクターを記したレトルトカレーだ。カレーは、ほとんどの人が好きな食べもので、ボールペンなどと比べると斬新で印象に残りやすいノベルティ。僕や部下たちは、商談の最後にカレーを渡して「えっ、なんで?!」と先方を驚かせることで、ユーザー企業での認知度向上を狙っている。
「カレー作戦」だけでなく、われわれは積極的にマーケティング施策を打つことによって、販社が製品を売りやすい環境をつくっている。実際に、こうしたマーケティング活動が実を結び、販売パートナーとは密な関係を構築できている。例えば、当社の製品が対応しているウェブアプリケーション群「Google Apps」のトップ販社で、約3000人の営業パーソンを走らせているパートナーに、僕の携帯番号を教え、「案件があったら、いつでもご連絡ください」と伝えている。そして実際に、一日平均3人は僕の知らない営業担当から電話が入ってきて、案件の獲得につながっている。
クラウド型商材の拡販を目指し、パートナーとして、これまで「Google Apps」のリセラーの開拓に力を入れてきた。今後は、メールセキュリティ対策のニーズが高まっているマイクロソフト「Office 365」のリセラーにも、パートナーになってもらいたい。部下たちには、「担当者の誕生日を調べて、その日に電話して」とアドバイスするなど、人間面での細かい配慮を重視することで、「Office 365」販社との絆を深める。
ご存じのように、メールセキュリティの業界は、プレーヤーがひしめいていて、競争が激しい。しかし、僕が営業の“哲学”にしているのは、「敵をつくらない」ということ。4人兄弟の末っ子であることも影響しているかもしれないが、これまでのキャリアでは、敵をつくるというよりも相手を味方につける力を磨いてきた。部下たちにも、ぜひ「敵をつくらない」ことを意識しながら、社内外の人と仲よくして、ビジネスの関係を築くことで、厳しい市場環境で勝ち抜きたいと考えている。

イタリア「Orobianco(オロビアンコ)」ブランドの鞄は、妻からの贈り物。「サイズがコンパクトながら収納力が抜群で、これで2日間の出張も大丈夫」と、実用性に満足げだ。