私は、教育・人材育成を主軸としているITコーディネータ(ITC)だ。情報系の専門学校に所属して、中小IT企業の新入社員研修や、大手IT企業の人材育成、ITCの資格取得に向けたケース研修などの講師を務めている。
毎年100人ほどのIT人材育成を支援しているが、実はIT企業で働いた経験はない。ITとの出会いは、専門学校の学生募集の業務に従事していた20年前に遡る。いろんな学校を回っていくうちに、「教務システムの構築で悩んでいる。どうしたらいいだろうか」と相談を受ける機会が増えてきたのだ。そこで私は我流でITを勉強し、その学校にとって最適と思える解決法を提案したり、実際にPCのDBソフトで簡単なシステムを構築したりしてきた。ITCの資格は制度が設けられた当初に取得した。利用者の立場でITの悩みを解決してきたので、ITCの基本的な考え方を学ぶことで自信をもつことができた。
私が講師を務めるときには、「お客様の話に傾聴する姿勢をもて」と受講生に強く訴えかけている。当然ではあるが、ベンダー所属のIT人材は、どうしても自社製品を売ることに意識を注いでしまい、お客様のことをないがしろにしがちだ。しかし、お客様の話をよく聞くと、製品を導入する必要がない場合もある。ベンダー側とお客様とでは考え方が違うのだから、傾聴して彼らの価値観を理解することは不可欠だ。その結果、ITベンダーは顧客志向を実現できる。私自身も、受講生から相談を受けたときには傾聴の姿勢を貫き、決して相手の意見を否定しない。IT企業で従事した経験がない私が長くITの講師を務められているのも、この姿勢が評価されているからだと思う。(談)
【ITコーディネータのプロフィール】名前:稲垣実
所在地:千葉県船橋市
所属:船橋情報ビジネス専門学校
略歴:イベント会社の営業企画職を経て、船橋情報ビジネス専門学校に入社。ITCの資格取得に向けたケース研修や、IT企業の新人社員研修・人材育成の講師を務めている。ITストラテジスト、上級システムアドミニストレータの資格を保有している。