霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報経済課長 佐脇紀代志 氏 ――目標実現への課題

2014/05/15 16:04

週刊BCN 2014年05月05日vol.1529掲載

語る人
佐脇紀代志 氏
経済産業省 情報経済課長

プロフィール 1992年、東京大学法学部を卒業し、同年、当時の通商産業省に入省。2000年4月、政策研究大学院大学博士後期課程に入学し、03年10月に博士(政策研究)。大臣官房政策評価広報課政策企画委員、中小企業庁長官官房制度審議室長、経済財政・科学技術担当大臣秘書官、経済産業大臣秘書官などを歴任し、11年9月から現職。


世界への情報発信を意識

 前号で説明したように、1万世帯にHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を実装し、今年度、これをクラウドで管理するプラットフォームを構築、標準化する実証事業「大規模HEMS情報基盤整備事業」を立ち上げた。手順を間違えさえしなければうまくいくだろうが、HEMSという日本が世界的にみても先行している分野のプロジェクトであることをしっかりと意識し、世界に向けた情報発信もやっていく必要がある。

 幸いにして、HEMSとその他関連機器の接続プロトコルについては、「ECHONET Lite(エコーネットライト)」という日本発の規格が、さまざまな国でオープンな規格として広がりつつある。今回の実証事業の成果を世界に展開していくためのベースにもなるので、これを生かして、開かれたかたちで広く発信するための方策を考えていきたい。

データ利活用の基盤が必要

 HEMSに関連する「データ駆動型イノベーション」を推進するためには、プライバシーに配慮したパーソナルデータの取り扱いに対する議論のほかに、民間企業などがもっているデータ同士をつなぐ、新しいデータ利活用のための基盤と、プラットフォーム事業者の塊をつくらなければならないと考えている。

 すでに、POSデータやソーシャルネットワーク上の公開情報をうまくサーベイして分析するプレーヤーは出現しているが、こうした情報に限らず、企業がオープンにしていない情報であっても、対価をとって流通させ、データを融通し合う仕組みを構築したい。これにより、さまざまなところに埋もれているデータに新たな付加価値が生まれ、その流通ビジネスが国際的に大きな市場に化ける可能性もある。

 例えば、OA機器の販売会社は、オフィスの広さや形状に合わせて、どのようにOA機器を配置するのが適切かという観点から、オフィスのレイアウトに関する事例情報を膨大に蓄積している。これは、ビルの建設会社や清掃会社、メンテナンス会社にとって、対価を払う価値のある非常に有益な情報のはず。

 公共データだけを対象にすると、情報を極力オープンにすべきという議論になりがちだが、民間企業のデータを流通させるとなると、そう単純ではない。情報を出す側が自分たちのもっているデータの価値に気づき、流通させるモチベーションを喚起する必要がある。そのためにどういう施策を打つべきか、正直にいえば悩んでいるところだ。(談)(本多和幸)
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