語る人
中村 稔 氏
情報処理推進機構(IPA)
参事 戦略企画部長
プロフィール 1986年、東京大学法学部卒業。同年4月、通商産業省入省。機械情報産業局情報処理システム開発課総括係長、在ポーランド日本国大使館一等書記官、石油公団総務部総務課長、経済産業省通商政策局中東アフリカ室長・内閣官房イラク復興支援推進室参事官、兵庫県産業労働部長、資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課長などを経て、2013年7月から現職。
変化に対応しつつ、腰を据えて実務を遂行
IT施策の実務を遂行するには、本来、専門家集団が必要になる。しかし、私も経済産業省からの出向だが、中央省庁は2~3年で配置替えになってしまう。そういう意味で、情報処理推進機構(IPA)は腰を据えてIT施策の実務にあたっており、国のIT施策の実行部隊として、重要な役割を担っている。ITの世界はものすごい速さで環境が変化していく。その最先端で毎日からだを張って活動している民間ベンダーからの出向者の協力を得て、継続性と急速な変化への対応という二律背反に近いような目標を同時に実現している貴重な存在ともいえる。
IPAのミッションは、「情報セキュリティ」「情報処理システムの信頼性向上」「IT人材育成」の三つに集約される。「情報セキュリティ」では、関連情報の収集、インシデントの解析、情報セキュリティの普及啓発などの活動を行っている。また、「情報処理システムの信頼性向上」については、IPA内にソフトウェア高信頼化センター(SEC)という組織をもっていて、ソフトウェアを開発する段階から、運用・保守を見据え、トラブルを回避させるためのプログラミングやプロジェクト管理に関する情報収集、分析、手法の体系化などに注力している。さらに、「IT人材育成」では、業界の皆さんも広くご存じだと思うが、IT人材のスキルアップを促すために、国家試験の「情報処理技術者試験」を実施しているほか、突出した若手のIT人材を発掘・育成する「未踏事業」も展開している。
ニーズを踏まえ、情報セキュリティに注力
あえて優先順位をつけると、世の中のニーズを踏まえ、情報セキュリティに最も重点を置いているといえるかもしれない。現在とくにフォーカスしているのは、ITベンダーにとってのユーザー、つまり一般の人たちのセキュリティ意識、ITリテラシーを高めていくことだ。地道な啓発活動で市場のすそ野を広げていくことも大切だと考えている。
一方で、情報セキュリティに対するアプローチとして、ソフトウェアを開発する際に、ぜい弱性をできるだけ排した安全な製品をつくりあげることが、ボディブローのように効いてくる。そのため、セキュリティ対策への波及効果も意識しながら、SECの活動も活発化させていきたい。(談)(本多和幸)
組織の概要 経済産業省所管の独立行政法人で、国のIT施策を技術、人材の両面から支える。2004年1月設立。前身は、情報処理振興事業協会。300人以上のスタッフが在籍し、そのうちプロパー職員は100人程度。