ネットワークやサーバーの構築を手がける三井情報で、文教市場にICT(情報通信技術)インフラを提案するチームを率いる小島孝幸さんは、「義」を重視する営業マネージャーだ。今年4月、組織の再編に伴って、小島さんのチームは6人から14人に増え、年配のベテラン営業も多く入ってきた。「友だちのように話しやすい」と社内で評判の小島さんは、自分より年齢が上の部下に対してきちんと敬語を使いながら、ときどきオヤジギャグを飛ばして和やかな雰囲気をつくり、チームの一体感を醸成している。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/横関一浩)
小島孝幸(こじま たかゆき)
1998年、文教市場に強いシステムインテグレータ(SIer)に入社。宮城県や岩手県など、東北地区を中心に営業に携わる。2002年、ネクストコム(現三井情報)に入社した。現在は、文教市場のほかに、エンタープライズ向けに無線LANなどのネットワークインフラを提案する部隊を率いている。14人の部下を抱える。
「義」と「話しやすさ」でチームを引っ張る
「よし、決定。以降、これでいこう。あははっ」。部下と話すときにオヤジギャグを飛ばすのは、意識してやっていることだ。私が率いるチームは、もともと6人の若手メンバーで構成され、上下関係をあまり気にしないフラットな組織だった。それがこの4月、営業体制強化の一環で倍以上の14人に増えた。組織を束ねる立場から、私は新しいスタッフたちとどのように信頼関係を築き、一体感を醸成していくかの挑戦を開始した。
まず、取り組んだのは、座席の配置替え。自分の席をシマのど真ん中にして、新しく入ったスタッフをその周囲に置いた。案件の進捗などについて、何か気づいたことがあればすぐに声をかけて、その場で結論を出すようにしている。新しいスタッフは、実はベテランが多い。私は上司として、年齢に関係なく割り切って指示を出すが、気をつかっているのは正しい言葉づかいだ。敬語で人生の先輩への敬意を表しながら、堅苦しい雰囲気にならないように、年配の人に通じるオヤジギャグをフル活用する。「義」と「話しやすさ」のバランスを取って、世代を超えた仲よしチームをつくっている。
組織のなかで、マネージャーが一番多くの仕事をこなし、部下に手本を示すのはあたりまえ。朝、8時30分に出社し、夜遅くまで会社に残ってその日の仕事を片づける。スタッフを家族のように大切に思うからこそ、彼らをリードし、成長させることに営業マネージャーとしてのやりがいを感じている。今、考えているのは、部下たちにより多くの権限を与えること。私はもともとプレイングマネージャーで、バリバリ現場に出ていたが、スタッフが増えたことで、仕事の一部を彼らに任せることが必要になっている。
私の下には、二人のグループリーダーがいる。彼らに少しずつ権限を移しながら、部下全員に「これまで私にたずねていたことは、これからはリーダーに聞くように」と伝えている。グループリーダーは、自分の責任が大きくなったからか、メーカーから仕入れた製品情報などを積極的にスタッフに発信し、チームを支える活動に自ら取り組み始めている。将来は、文教市場とエンタープライズ市場の両方を担当しているこのチームを二つに分けて、それぞれ専任の営業室をつくりたい。
今後の課題は、インフラにクラウドサービスを付加することなど、いかに提案の独自性を高めるかだ。そのためにもスタッフとの信頼関係を築いて、能動的にアイデアを出すことができる環境を整えることが大切だと思っている。
最近はまっているのは、卓球。月1回、部下たちといっしょに近所の卓球場に行って、三井グループの卓球大会に向けて腕を磨いている。いつもは静かな部下も、汗を流すと多弁になり、業務の改善などについて意見を聞かせてくれる。「ファミリー」で力を発揮し、一体になってビジネスを拡大する。
私の営業方針を表す漢字は……「義」
私がチームの理念に掲げているのは「先義後利」。つまり、道義を優先すれば、利益は後からついてくるということだ。私たちは、大学や小・中・高等学校を重要なターゲットにしているので、一般企業向けの営業とは違う手法で提案活動を進めている。国が力を入れている教育のICT化に伴って、学校ではネットワーク環境の構築に関するニーズが旺盛になりつつある。部下たちを教育現場に送り出し、校舎はどんなつくりか、教員が使うアプリはどんなものかを調べたうえで、その学校に適したインフラの提案を心がけている。