音声翻訳技術で壁を乗り越えろ!
政府は東京五輪に向けて、公衆無線LANのアクセス拠点を面的に広げるという環境整備を進めるが、これを活用した「おもてなし」のためのコンテンツも同時に整備していく必要がある。
東京五輪は、観光産業や飲食業、宿泊業を含むさまざまなサービス業にとっても大きな商機といえる。この商機をしっかりとものにするためには、「言葉の壁」をいかに乗り越えるかも重要な課題になる。改定版「世界最先端IT国家創造宣言」では、多言語音声翻訳システムの高度化も、IT利活用による「おもてなし」のための施策として掲げている。
具体的なプロジェクトは、総務省が昨年4月に発表した多言語音声翻訳システムの社会実装を目指すプラン「グローバルコミュニケーション計画」に則って進め、同省は、多言語音声翻訳技術の研究開発と実証事業に、2015年度から2019年度までの5年間で約100億円の予算を投じる方針だ。
TOEICでいうと現時点で600点レベル
実は、このプロジェクトのコアとなる技術は、すでに世に出ている。情報通信研究機構(NICT)が代表を務めるコンソーシアムが開発した多言語音声翻訳システム「VoiceTra4U」で、無料スマートフォンアプリとして提供している。また、NICTから技術移転を受けたフィートも、同様にスマートフォン用アプリとして「VoiceTra+」を無料で提供している。
VoiceTra4Uは、27言語間の自動翻訳が可能で、細かくみると、17言語での音声入力、14言語での音声出力に対応している。iOS版に関しては、5台までのデバイスで同時に音声チャットを利用することも可能で、5人全員が異なる言語を使っていても対応できる。とくに、日本語、英語、中国語、韓国語の4言語については、旅行会話の領域で、TOEICでいうと600点レベルの精度を実現しているというから、なかなかのものだ。
次回は、このVoiceTra4Uを活用した社会システムの実用化に向けて、国がどのような事業を展開していくのか、詳細をみていく。(本多和幸)