ウェアラブル端末は、発展途上であり、いまだはっきりとした完成形がみえていない。市場拡大の可能性はあるが、ウェアラブル端末をつくる側からすれば、大きなリスクを伴う。そのリスク軽減の開発手法の一つとして「クラウドファンディング」方式を活用するケースが増えている。クラウドファンディングは、ネット上で開発資金を募る仕組みで、国内では完成した製品を購入することで間接的に資金支援を行う「購入型クラウドファンディング」が、ここ数年で急速に普及してきた。
メガネ販売店「パリミキ・メガネ」を擁する三城ホールディングス筆頭株主のルネットなどが手がける眼鏡型ウェアラブル端末「雰囲気メガネ」も、「クラウドファンディング」方式を採用して開発に着手。2015年1月から資金を提供した支援者向けに、まずは製品化第1号の出荷を始めている。活用したクラウドファンディングは、サイバーエージェントグループのサイバーエージェント・クラウドファンディングが運営する「Makuake(マクアケ)」で、14年7月に資金を募り始めたところ「わずか数日で目標額の300万円を達成してしまい、最終的に680万円ほど集まった」(三城ホールディングスの河村和典・チーフエバンジェリスト)と、予想を大きく上回る支援者を募ることができた。
資金を募るといっても、1万円支援すれば雰囲気メガネが1本、2万円なら2本という具合に、実質、出来上がった商品を購入する“購入型のクラウドファンディング”。しかも一般向けの想定販売価格は2万3000円ほどを予定していることから「支援者向けには実費ベースどころか、正直、原価割れ」(同)という。では、なぜ、儲けの出ないクラウドファンディングを利用したのか──。理由は、メガネ販売大手の三城ホールディングスといえども、眼鏡型ウェアラブル端末を開発するのは初めての経験であり、「まずはプロジェクトを進めるうえで社内向けの説得材料がほしかった」ことが背景にある。現に「これだけ支援者が集まった」と具体的に示したことで「社内の空気も変わった」と、河村チーフエバンジェリストは話す。

クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」に掲載されている「雰囲気メガネ」のページ もう一つは、アプリケーションソフト開発者のコミュニティを形成できるメリットを挙げる。眼鏡型ウェアラブル端末のハードウェアを完成させても、どう活用するかはアプリケーションによるところが大きい。同プロジェクトは、開発者向けにソフトウェア開発キット(SDK)を配布していて、「われわれが思いもよらなかったユニークなアプリケーションソフトを自由につくってもらいやすくなる」(同)と、開発者コミュニティの形成を見込んでいる。実際、今回のクラウドファンディングには、多くの開発者も支援者として参加している。
順調にいけば、今年夏頃までには一般向けの製品販売にこぎ着ける見通しだ。(安藤章司)