
矢野和男
主管研究長 日立製作所は独自のソフトウェア・アルゴリズムによって“ある一定規模の集団の幸福感”の計測を実現した。集団の幸福感を高めることで、企業であれば業績の向上、その組織に属する個人であれば生産性や創造性の向上につながることが、すでに証明されている。日立では首掛け式のカード型ウェアラブル(3月16日号の写真参照)によって、幸福感を“ハピネス度”という単位で指標化するサービスの事業化を進めている。
このカード型ウェアラブルを巡っては、さかのぼること2010年10月に、日立ハイテクノロジーズによって事業化されており、このときは「ビジネス顕微鏡」という名称だった。これは、一連のアルゴリズムを開発した日立製作所の中央研究所が、長年にわたって電子顕微鏡を研究してきたことに由来するとともに、本来、目には見えない組織の活性度合いやハピネス度を可視化するというカード型ウェアラブルの役割から名づけられた。
今回は、従来の組織の活性度を計測する機能の、「より上位の概念として“集団のハピネス度”の可視化」(日立製作所の矢野和男・中央研究所主管研究長)も可能にした。ポイントは、いずれも“集団”や“組織”に着目している点である。企業における集団の活性度の測定では、赤外線ビーコン(無線標識)でオフィスのどこにいるのかを把握し、かつ対面赤外線センサで、誰が誰と、どれだけの時間、対面したかによって組織の活性度を測定する。さらに、ハピネス度ではこうした集団のなかにおける身体の動きの“特徴”(図参照)から導き出す。
わかりやすい例を挙げれば、M&A(企業の合併と買収)で複数の組織が再編されたとき、最初は旧会社の組織ごとに固まっていた集団が、徐々に打ち解け合って、新組織として一つにまとまっていく様子を如実に可視化できる。逆にいえば、いつまでも旧会社の組織ごとに固まっていては、M&Aの効果を発揮しづらいので、どこがボトルネックになっているのかを可視化するというわけだ。ほぼリアルタイムに計測できるのも強みで、組織活性化のスピードアップを図ることができる。
販売は「ビジネス顕微鏡」と同じ日立ハイテクノロジーズで、「組織の活性度」の上位の概念として「集団の幸福感」を加えることで、ビジネスに弾みをつける。(安藤章司)