30年ほども使ってきたナショナル製(懐かしい!)の回転式シェーバーが、ついに壊れてしまった。何回か最新式の電動シェーバーに浮気したものの、思うように剃れず、結局は扇風機みたいな刃が回転するだけという単純構造の剃り味が一番しっくりきていた。充電式で約30年も使用できたことに、さすが「Made in Japan」のシェーバーだと感心せずにはいられない。分解してみると、かなり単純なつくりになっていることがわかる。ところが、簡単には修理できそうにない。故障は充電池が原因だと思われるからだ。というのも、海外出張に持っていってから、調子が悪くなったからだ。慣れない海外での充電が、昭和生まれのシェーバーには負担となったのではないか。充電池を交換できればいいのだが、本体に埋め込まれていて素人には手が出せない。回転式シェーバーは安く買えるので騒ぐほどでもないが、愛着があったので残念だ。
春節(旧正月)に中国の旅行者が、大量の買い物をしていて話題となった。実は中国でも買えるが、日本で売っているモノを買うというところがポイント。同じ商品でも、日本で売っているモノは信用できるという。「Made in Japan」ではなく、「Sold in Japan」である。
IT分野でも似たケースがある。「日本で認められれば品質が認められたことになり、自信をもって世界に展開できる」として、海外進出の最初の拠点に日本を選ぶ外資系ベンダーは少なくない。日本での成功という「Sold in Japan」を武器に、グローバル展開をしていこうとの考えである。日本進出をサポートする日本人の入れ知恵かもしれないが、外国人が日本に抱くイメージとしては違和感がないようだ。
「Sold in Japan」がブランド力の一助となるのであれば、日本企業は常にその環境で勝負しているのだから、チャンスに恵まれていることになる。ましてや、外国人に「日本=品質」のイメージがあるのなら、生かさない手はない。そう思って成功事例を探すことを、このところのテーマとしている。簡単ではないが、品質というブランドが確立したら強い。
新しく購入した回転式シェーバーは、残念ながら「Made in Japan」ではなかった。とはいえ、日本のメーカー製、かつ日本で売られている「Sold in Japan」である。この先、何年使えるのか。今後の楽しみが一つ増えた。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。