企業や団体は従業員やその扶養家族、取引のある個人事業主などのマイナンバー(社会保障・税番号)の収集・管理を担わなければならない。この収集・管理を自社の責任で行うか、外部へアウトソーシング(BPO)するのかの大きく二つの選択肢がある。日立製作所グループでは、前者の自社管理の仕組みを日立ソリューションズが提供し、後者のBPO方式を日立システムズが担当している。
BPOの最大の利点は、マイナンバーの収集・管理をベンダー側にほぼ丸投げできる点にあって、安全性についても「日立システムズの強みとするデータセンター運営で培った安全管理のノウハウを最大限に発揮」(中田龍二・クラウドサービス拡販本部本部長)するので、安心して任せられる。日立システム側も攻撃を受けやすいオンラインでの処理をほぼ排除し、マイナンバーをセンター内に閉じ込め、外部とのやりとりは“紙”による郵送や運送といった「アナログ処理を織り交ぜる」(盛川卓也・ビジネスサポート本部副本部長)仕組みを採用。安全重視のBPOサービスをこの7月から始めている。

日立システムズの中田龍二本部長(左)と盛川卓也副本部長 一方、日立ソリューションズは「ユーザー自身でマイナンバーを収集・管理するための仕組みを体系化」(田富範之・ハイブリッドインテグレーションセンタHI開発部部長代理)して、個別のシステム構築(SI)方式で今年4月からスタート。自社管理の利点は、やりようによっては維持コストを安く抑えられる点にある。BPOはサービス方式なので、当然だが、マイナンバーを預けている間はサービス料を支払い続けることになる。自社管理の場合、情報システム担当者の人件費はかかるものの、システム投資は一過性だ。

日立ソリューションズの田富範之部長代理(右)と阿井一仁担当部長 とはいえ、自社管理にもデメリットはある。現在、すでに2015年8月。マイナンバーの配布が始まるのは10月、制度スタートは1月であることを考えれば、自社でマイナンバー対応のシステムを個別で構築するには、あまりにも時間がなさ過ぎる。日立ソリューションズでは、SIに必要な時間を見越して業界でも最も早いタイミンクでマイナンバー対応ソリューションを発表し、宣伝に努めてきたものの、いかんせんユーザー自身の予算化が「下期(10月)以降になるケースが目立つ」(日立ソリューションズの阿井一仁・HI開発部担当部長)という。
そこで日立ソリューションズでは、個別SIを極力少なく抑えられるよう、同社がもつ既存のパッケージを応用するかたちでユーザーに提案している。(つづく)(安藤章司)