「FUIJITSU Knowledge Integration」を実現するための新しいプラットフォームである「デジタルビジネスプラットフォーム(DBPF)」。富士通がその中核と位置づけるのが、2015年度(2016年3月期)第3四半期に提供を開始するパブリッククラウドのIaaS/PaaS「K5」だ。グローバルベンダーの“メガクラウド”ばかりが目立つこの領域で、富士通は何を強みに、どんなポジションを目指すのか。(本多和幸)
パブリッククラウドのインフラサービス、プラットフォームサービス市場では、アマゾン・ドットコムのAWS(Amazon Web Services)が圧倒的なシェアを握り、以下、マイクロソフト、グーグル、IBMなど、グローバル大手のメガベンダーが大きなシェアを獲得している。国産ベンダーでは、NTTコミュニケーションズなどが健闘しているといえよう。
一方で、いまや国内最大の総合ITベンダーとなった富士通はどうだったか。IaaS領域では、富士通のデータセンター内の仮想サーバーで、専用物理サーバーと同等の操作性、安全性、信頼性を提供するという触れ込みのパブリック型IaaS「Trusted Public S5」、マイクロソフトからAzureのOEM提供を受けた「A5」、さらには「NIFTY Cloud」を筆頭に、グループ会社もいくつかのサービスをラインアップしているが、先に挙げたようなベンダーに比肩し得る存在感を発揮してきたとは言いがたいのが実情だ。
富士通はK5の発表時、メガクラウドと真っ向勝負するという姿勢は明確にしなかった。それでも、DBPFのビジネスをけん引する中村記章・デジタルビジネスプラットフォーム事業本部副本部長は、「クラウドのインフラ、プラットフォームのレイヤでも、市場のメインプレーヤーになることを諦めてはいない」と力を込める。DBPFのサービス群には、マルチクラウド統合管理ソフト/サービスなどもラインアップしていて、他社クラウドとの連携も前提としているが、IaaS/PaaSベンダーとしてのビジネスそのものも、従来とは違うレベルで高めたいという意思を明確に示している。
K5のサービス概要については、図を参照してほしい。富士通がK5のメリットとしてとくに強調するのが、「これまで蓄積してきたSEの知見・ノウハウを余すところなく注ぎ込んだ」(中村副本部長)という点だ。他社のクラウドとの差異化については、大きな自信をもっているという印象だ。