ISPとしての顔をもちながら、現在では、法人IT市場におけるクラウド事業者としても存在感の大きいニフティ。負荷が厳しいエンタテインメント系のサービスを動かし続けてきた実績は、需要が拡大する業務システムのクラウド移行においても評価されている。(日高彰)

福西佐允
部長 数年前までは、一般家庭向けインターネットサービスプロバイダ(ISP)としてのイメージが強かったニフティだが、2010年にパブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」の提供を開始。以来5年で4000以上の導入件数を数えるまでに成長し、日本有数のクラウド事業者として存在感を放っている。
ニフティクラウドは、もともとは自社のサービスをユーザーに提供するためのインフラとして構築された基盤を利用して開始された事業だった。当初のユーザーは、ソーシャルゲームなどを提供するコンテンツプロバイダが中心だった。負荷を見積もりやすい業務システムと異なり、B2Cのサービスでは、イベント開催や広告掲出などのタイミングで巨大なトラフィックが発生することもあるが、ニフティではISP事業を本業としていたこともあり、突発的な負荷にも耐える高速・低遅延のネットワークを提供できる点が強みとなった。
比較的リーズナブルな価格で質の高いインフラを使用できるとあって、エンタテインメント業界での導入を追うかたちで、業務システムの基盤としての採用も拡大した。現在はニフティクラウドの引き合いの約7割が、エンタープライズ系の案件になっているという。
同社の福西佐允・営業企画本部ビジネス企画部部長は、「“トラフィックが暴れる”アプリケーションを落とさずに動かし続けたという実績が、ニフティクラウドの評価を高めた要因の一つではないか」と話す。ウェブサービス中心だったクラウドのニーズが、次第に業務アプリケーションへと広がっており、「業務は止められない。落ちては困る」という要求がより切実なものとなるなか、逆説的ではあるが、B2C時代の実績が高信頼性の証明につながっているようだ。
エンタテインメント系の案件が中心だったころは、エンドユーザー自身がクラウドの特性をよく理解しており、ユーザー側の技術者がクラウドを利用したシステム構築のスキルももっていたため、サーバーやネットワークといったインフラをそのまま提供するだけでよかった。これに対してエンタープライズITの世界では、ユーザーの業務システムの構築や運用・保守を行うのは主にSIerだが、必ずしもすべてのSIerがクラウド構築に十分なノウハウをもっているわけではない。加えて、ハードウェア販売を含むオンプレミスのシステム構築を長年営んできたSIerの場合、クラウドを基盤として活用するとなると、ビジネスモデルの転換も迫られる。
現在、ニフティクラウドでは、パートナー経由の販売が、全体の約6割を占めるまでに拡大しているが、その裏側には、「技術」と「ビジネス」の両面でパートナーをサポートするニフティの支援体制があった。(つづく)