マイペースで攻める。年頭所感の取材からは、そのような印象を受けた。2016年について、経営トップの多くは「日本経済は15年に引き続き好調」とみているが、アクセル全開というよりもマイペースを貫く考えだ。本来なら、現状のビジネスが好調なうちに大胆なチャレンジをしたいはずだが、手堅い経営で次の一手を準備している。

 マラソンでは、走り始めてしばらくすると急に体が軽くなる。いわゆるランナーズハイの状態。ただ、そこでスピードを上げてしまうと、いずれ体が重くなり、ゴールまで体力がもたなくなってしまう。マイペースを維持しながら、誰もが苦しくなる後半での快走を目指す。

 IT分野における新たな潮流として、FinTechやAI(人工知能)が注目を集めている。魅力的ではあるが、自社で積極的に投資するのではなく、スタートアップ企業との提携によってカバーするという動きが多い。いわゆるオープンイノベーションである。新たな潮流がみえても、ビジネスのペースを乱すことなく、商機があるかどうかを模索していくというわけだ。

 また、日本経済が好調でも、積極的になりきれない理由がある。一つは、公共投資が一服する東京五輪後の経済不況。五輪後の不況は歴史が証明しているが、予想できるなら対策もできる。五輪後を意識した取り組みも始まりつつある。もう一つは、海外情勢。テロや紛争のリスク、新興国の成長鈍化、米大統領選挙などの影響は読みにくく、経営の舵取りを慎重にさせる要因になっている。

 とはいえ、金融業界にFinTech、製造業界にインダストリ4.0、全業界が対象のIoTやAIといったように、ITに対する期待は増すばかり。「五輪後もまったく心配していない」と語る経営トップも少なくない。五輪後の経済成長を支えるのは、むしろIT業界なのである。(畔上文昭)