政府主導の地方創生は、果たして5年後の平成31年度末に実を結んでいるのであろうか?それともただのかけ声倒れになっているのであろうか?
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が平成26年12月27日に閣議決定された。全国の地方自治体においても、平成27年度末までの期限に向けて「地方人口ビジョン」および「地方版総合戦略」の策定を急いでいる。
戦略の方向性は、国と地方は合わせることになっており、次の4分野が定められている。(1)地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする(2)地方への新しい人の流れをつくる(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる(4)時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する。各分野のなかで、どのような戦略を立てるのかは各地方自治体に任されている。いくつかの自治体の総合戦略をみたところ、仕組みづくり、組織づくり、そして人づくりといった切り口が多かった。仕組みづくりには、ITが重要な役割を果たしている。地産地消の地元野菜の集配送を支える仕組み、高齢者の見守りサービス、インバウンド向けの観光サイト。どれも地域経済を支える重要な仕組みになる。
ただ、同じようなシステムを同時に複数の自治体で投資をして構築するのではなく、同じカテゴリのシステムを企画する自治体がコンソーシアムを設立し、共同開発ができないだろうかと思う。幹事自治体が運営主体となりオープンソース化も考えられる。運用段階の保守やバージョンアップも共同で行うことにより、コスト抑制とノウハウの蓄積にもつながる。
システムの共同構築までいかずとも、施策実施率の公開システムは政府で統合してつくりたい。各自治体とも戦略実現の評価指標としてKPI(重要業績評価指標)を設定することになっているので、まち・ひと・しごと創生本部のホームページ上で、全国すべての自治体のKPIと、その目標値と実績値を各年ごとに閲覧できるようにするべきだ。作文によるPDCAではなく、数値でしっかりフォローアップが可能になる。国の予算とはいっても、もとは私たちの税金である。知恵の出し方で「なるほど日本はスゴイ!」と世界を驚かせたいものだ。予算が成立するたびに色めき立つIT産業であってはならない。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。