「勝さん、アメリカでIBMのAS/400(現在はPower Systemsに統合)上で動くシステム開発ツールが大ヒットしていて、ハードの売り上げに貢献しているらしいよ」と聞いたのは、ちょうど10年前の2006年のことだ。うわさの開発ツールは、南米ウルグアイにあるウルグアイ共和国大学の教授Breogan Gonda博士が開発し、1989年にリリースしたGeneXusだった。
設計情報を「ナレッジベース」に定義することで、「実装(データモデリング/コーディング)」を自動化。従来のCASEツールよりもすぐれているのは、使用できるデータベースや言語のプラットフォームに依存しない点である。メタ情報を定義することで動くシステムが実現できるため、開発側だけでなく経営にとっても有利性がある。
神奈川県小田原市のあるユーザー企業に聞いたところ、以下の4点で効果が出ているとのことだった。一つ目が早い時点で画面と動作の出来上がりが確認できること。ユーザーは終盤にならないと現物のシステムを確認することができない。そのことが大きな手戻りの発生要因となっていた。二つ目が、自社要員での運用・改善ができること。開発時から社内の開発メンバー主体でチームを組み、リリース後は自社要員だけで運用していた。終わりのみえない運用予算は経営者にとっての不安要素だ。三つ目は、マルチプラットフォーム対応によるインフラ側の一方的な変更対応に強い点。仮想環境の利用も便利さを増す要因である。四つ目が、開発スピードが速い点ということだった。
超高速開発については、超高速開発コミュニティ(関隆明会長)という団体が2013年に設立されている。こちらのウェブサイトでイベントの案内のほか、約30社の導入事例も公開されている。(
https://www.x-rad.jp/)
12年に日経コンピュータの特集記事で脚光を浴びた「超高速開発」だが、最近は銀行系を始めとして適用事例が急速に増え、16年はさらに開発実績が増えて、超高速開発への本格的取り組みが加速するとみられる。利用の分野ではこうした手法を積極的に取り入れ、開発工数で浮いた分の労力を業務プロセスの改革・改善の教育やCODE教育に充てる。そうすることで日本の産業力強化に資するIT産業でありたいと願っている。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。