iPSサービス。京都大学の山中伸弥教授が研究している「iPS細胞」(いわゆる万能細胞)からヒントを得て、2年ほど前に思いついたクラウドサービスの別称である。クラウドサービスを構成するIaaS、PaaS、SaaSという三階層の頭文字から、iPSサービスとした。そこには“クラウドは万能である”の気持ちが込められている。講演の機会をいただいたときは、必ずといっていいほど使っているネタなので、笑いのツボはかなりつかんだと思う。
クラウドは当初、オンプレミスの代替としての役割を期待されることが多かった。導入や運用のコストが安くなる、必要な分だけ調達できる、サーバーのリース期間を考慮しなくてよいなど。それは正しいが、オンプレミスの代替というだけではおもしろくない。
SIerがなかなかクラウドに取り組もうとしない、という話を以前はよく聞いた。クラウドは導入時の売り上げが小さいため、営業担当者が嫌うというのが理由の一つ。導入時の売り上げが小さいと、インセンティブも小さくなるからだ。そこでSIerは、クラウドのようなストックビジネスにおけるインセンティブを見直すようになった。
ただ、SIerがクラウドに取り組まない理由は、システムエンジニア(SE)側にもある。業務系SEにとって重要なのは、ビジネスをサポートするシステムをいかに構築するかであって、クラウドかオンプレミスかは関心事ではないからだ。SIerがクラウドに取り組むようになったのは、顧客ニーズにマッチしただけのこと。オンプレミスに対するニーズは根強く、SIerがクラウドをゴリ押しすることはない。
ところが、IoTといえばクラウドである。オンプレミスセントリックのSIerでも、IoT分野に参入するとなれば、クラウドを無視できないはずだ。理由はたくさんある。まず、インターネットを使う。インターネットといえば、クラウドである。IoTデバイスから多種多様なデータを取得するが、どれくらいのデータ量になるかが読めない。拡張性といえば、クラウドストレージである。多くのユーザー企業にとって、IoTは新規投資分野であり、効果が読めない。スモールスタートにするならクラウドである。
IoTはビジネスにイノベーションをもたらす可能性がある。クラウドはオンプレミスの代替ではおもしろくない。イノベーションのためにあるべきだ。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。