今回の参議院選挙を振り返ってみると、インターネットというメディアの政治に対する影響度が増してきたことを改めて感じる。以前は、テレビ、新聞、街頭演説などが候補者の情報を伝える主要メディアであったが、今ではネットの記事、SNSでの拡散などインターネットが果たす役割は大きくなった。
日本は、間接民主制あるいは議会制民主主義をとっている。選挙によって代表者を選出し、自分の権利をゆだねることで間接的に政治に参加している。ゆだねられた議員も、時折ミスを犯しマスコミに叩かれる。
では、いっそのこと議員を選ぶのではなくて、国民一人ひとりがすべての案件について是か非かを投票したらどうか?というのが直接民主制である。インターネットの発達で不可能ではないように思えるが、古くはナチスの国民投票による独裁政権の確立や最近では英国のEC離脱など民衆の意見は流されやすいという懸念もある。
どちらがよいかという制度的な問題よりも、私たちの多くが自らの国に関わることを知り、調べ、考え、意見をもつことに時間と労力をかけていないところに問題があると私は思う。自分の仕事や生活に精いっぱいで、政治のことは政治家という職業の人にお任せでは、代議士を選ぶ時の判断基準を持ち合わせることができない。「いい人そうだから」「テレビで見たことがあるから」で選ぶのではなく、政策で選ぶための判断基準を持ち合わせたい。
私たちは目にした情報に左右されやすい。今後ICTに期待するのは、情報の確からしさを分析して私たちに届けることだ。誤った情報で政策を論じていると、結論も誤った方向に導かれてしまう。疑惑の追及に時間を割くよりも、政策についての解説や論点の整理、あるいは現状の分析に時間を割き、どのような選択をするべきかをみんなで考える。そうしたメディアとしてインターネットが活用されることを私は願う。
これからは行政機関も、議員も、首長もさらに情報開示と論点の整理を率先して行っていただき、住民とともに考える民主主義の実現を目指すべきだと私は思う。他方、投票制度に関する改善にこれからICTが貢献できるところも大きい。投票率が向上し、義務でなく自由意志の表明としての国民の政治参画が進むことを期待したい。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。