ブロックチェーン市場の立ち上げをリードしているのは専業のスタートアップだが、金融領域に強みをもつ大手SIerも、顧客のビジネスにイノベーションを起こし得る技術として大きな関心を寄せている。(取材・文/本多和幸)
野村総合研究所(NRI)は、国内の大手SIerのなかでも、とりわけブロックチェーンのキャッチアップに積極的な姿勢をみせている。注目度の高いブロックチェーンの実証実験にも参画してきた経緯があり、本連載の11回~13回で紹介した日本取引所グループ(JPX)のワーキングペーパー「金融市場インフラに対する分散型台帳技術の適用可能性について」にも、同社が深く関与した実証実験の結果がフィードバックされている。また、経済産業省から、「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)」を受託するなど、早くから知見を蓄積してきた。
既存の金融システム、ひいては金融ビジネスそのものに破壊的な変革をもたらす可能性も指摘されているブロックチェーンについて、既存の金融ビジネス、システムに精通した同社は実際のところどう評価しているのか。此本臣吾社長に直撃した。
破壊的な新しいサービスを生み出す可能性は十分
――国内の大手SIerでは、NRIはブロックチェーンに関して先行して知見を蓄積している印象があります。根本的に金融システムを換えてしまうポテンシャルを感じているということでしょうか。
此本臣吾
社長
此本 ポテンシャルは本当に大きいですよ。金融のシステムという意味でもそうだし、金融のビジネスモデルという意味でも、本当に実用レベルになってきたら、大きなインパクトを与えることになるでしょう。
ブロックチェーンにもプライベートブロックチェーンとパブリックブロックチェーンがあります。とくにパブリックブロックチェーンのほうは、実用化までに必要なプロセスと時間軸を考慮する必要こそありますが、ものすごい破壊力のある、本当に新しい価値をもつサービスを生み出す可能性があると思っています。
――NRIが参画した実証実験もベースにして、証券市場へのブロックチェーンの適用可能性について評価したJPXのワーキングペーパーが昨年8月に発表され注目を集めました。そのほかにも銀行の勘定系システムへの適用などを検証する事例も出てきています。ただ、同じ検証結果をみても「ブロックチェーンはすごい」という声と、「こんなものは使えない」という声が両方聞こえてくる気がします。
此本 現時点では、どの角度からブロックチェーンをみるかによって評価が異なってくるということです。(つづく)