実績があり、優秀なエンジニアを抱えているが、企業としてはあまり成長していない。小規模なSIerにありがちな傾向である。SES(System Engineering Service)をビジネス の中心としている場合、常に案件を獲得できるとは限らないし、人材の獲得も容易ではないため、経営しやすい規模としての現状維持が続きがちになる。とはいえ、同じ現場で働き続けていると、ノウハウがしっかり蓄積されている。それゆえ、小規模なSIerでも、上を目指すチャンスは十分にあると、SMHCの李鉉道・代表取締役は主張する。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 SMHC
所在地 東京都新宿区
資本金 2000万円
設立 2016年5月
社員数 23人(連結60人)
事業概要 システム開発、介護コンサルティング、クラウドサービス
URL:http://smhc.co.jp/
ITと介護の両輪でビジネス
李 鉉道
代表取締役
SMHCの創業は2016年5月。創業者の李代表取締役は、中国出身で日本に留学し上海で就職。日系企業の現地法人で総経理などを歴任した経歴をもつ。15年末に日本に戻り、SMHCを立ち上げた。
「日本に戻って、会社を立ち上げようと考えたときに、思いついたのが介護だった。日本は高齢化社会を迎えていることもあり、介護ビジネスが根づいている。そのノウハウを中国に展開するにあたって、ITを活用した介護サービスにしようと判断した」と、李代表取締役は語る。
とはいえ、いきなり人材を確保するのは容易ではない。そこで目を付けたのが、小規模なSIerだ。「知り合いが小さなSIerを経営していた。聞くと、10年ほどの実績があるものの、会社の規模はほとんど変わっていないという。エンジニアを現場に送り込むだけでは、ほかのSIerとの違いを見出すのは難しい。また、会社の規模が小さいままでは、SI業界のピラミッド構造の一番下に甘んじてしまいがちになる。景気が悪くなれば、ピラミッド構造の一番下から切られてしまう。そこで、私と一緒に上を目指さないかと説得したところ、今のメンバーに響いた」と、李代表取締役は起業までの経緯を語る。小規模なSIerを2社集めて、SMHCがスタートした。ちなみに、SMHCは「System、Medical、HealthCare」の頭文字である。
スピード経営とクラウド
李代表取締役の「上を目指す」とは、下請けから元請けに変わることを意味する。それを実現するために、ウェブアプリケーション事業を立ち上げ、SESから徐々に元請けにシフトしてきている。「すでに上場企業の案件を獲得するなど、実績ができつつある。小規模SIerといえども、エンジニアは同じ現場で長年積み上げたノウハウをもっている。そのノウハウをいかに生かすかが重要で、多くの小規模SIerはそこをあまり考えてきていないのではないか」。優秀な人材がいることを確認した李代表取締役は、もっと大きな案件を獲得できると考えている。会社の規模も、近いうちに倍近くに拡大させる考えだ。
李代表取締役がSMHCの方針として掲げるのは、スピード経営とクラウドへの注力である。「とにかく決断のスピードを上げる。チャットツールを活用して、会議を減らす。こうしたことを徹底している。また、クラウドに注力するのは、これからはオンプレミスではないだろうという判断から。IT業界は人材不足の状態にあるが、市場ニーズに合う人材が不足しているというだけ。特定の開発言語を得意とするだけのエンジニアは、いずれ淘汰されると思う。そこで、クラウド時代に合ったエンジニアを育てるための勉強会を社内で実施している」。社員がクラウドベンダーの資格を取得したことで、クラウド案件の獲得につながっているという。
今後は介護分野に進出
SMHCは今後、クラウド分野で実績をつくりながら、介護分野のサービス開発を目指している。「もともとは、介護関連のビジネスを立ち上げようとして、会社を設立した。ただ、介護サービスにはITを活用したサービスが最適と考え、まずはIT分野で実績を残すことを優先している。そのため、介護ビジネスではクラウド的なものを検討している」と李代表取締役。IT関連事業を展開しつつ、介護関連事業を立ち上げていく考えだ。
日本に本社を置くSMHCだが、介護関連事業は中国で展開することを目指している。「日本は介護関連ビジネスが定着しているが、中国にはノウハウが少ない。施設が不十分で介護士も不足しているため、クラウドやIoTを活用しないと管理できない」ことから、李代表取締役は日本の成功モデルを学び、中国に展開することを構想している。