遺伝的アルゴリズム

　ダーウィンの進化論をもとにした探索方法。英語で「Genetic Algorithms」と表記し、「GA」と略す。人工知能（AI）の代表的なアルゴリズムといわれている。

　遺伝的アルゴリズムは、米国ミシガン大学で教授を務めた科学者のジョン・ヘンリー・ホランド氏が1975年に考案した。選択や交叉（こうさ）、突然変異を繰り返してきた生物の進化の考え方を適用して解を導く仕組みだ。

　膨大な探索空間のなかで、たくさんの候補から、最適と考えられる解をみつけることを得意とする。とくに組み合わせの数が爆発的に増え、人間では計算が難しい問題について、短時間で高精度の解を導くことが可能とされている。

　具体的には、複数の都市を回り、最初の都市に戻る道順の最短距離を求める「巡回セールスマン問題」や、ナップザックに複数の品物を入れ、価値を最大にする組み合わせを選ぶ「ナップザック問題」の近似解法として使うことができる。

　ただ、設計者の技量で、結果は大きく変わる。最適解を導く前に探索が収束する場合もあり、解が最適かどうかの保証がない点を欠点と指摘する意見もある。厳密な解が必要な場合は、ほかの探索方法と併用する必要がある。

　遺伝的アルゴリズムが考案された当初は、手法の有効性を批判する声もあった。しかし、コンピュータの性能が進歩したことに伴い、90年代から研究が活発化し、現在はプログラミングなどに応用されている。

エキスパートシステム

　英語で「Expert System」と表記し、「ES」と略す。専門家の知識を活用したシステムで、「専門家システム」と訳されることがある。人工知能（AI）の研究から生まれた。

　エキスパートシステムの開発は、1960年代から始まったとされる。70年代に入ってから、米国スタンフォード大学の研究者らが医療向けのエキスパートシステム「MYCIN（マイシン）」を開発し、大きく注目された。

　80年代には、第二次人工知能ブームを支えた。日本では「第五世代コンピュータ」と名づけられた大型プロジェクトが推進された。しかし、技術的な問題でプロジェクトはとん挫。ブームも冬の時代を迎えた。

　エキスパートシステムは、ユーザーの求めに対応する回答を、あらかじめ用意した知識ベースのなかから予想する。知識ベースは「もし～ならば、～である」というルールで構築する。ルールの数が多ければ、判断がより正確になる。ルールの追加や削除、修正は容易にできる。

　一方、ルールが少しでも欠けていたり、入力した知識があいまいだったりすると、判断を誤る可能性がある。さらに、専門家以上の知識が得られないことも欠点と考えられている。

　エキスパートシステムは、AIの一つといわれることがある。ほかのAIとは異なり、自ら学習しないのが特徴となっている。以前、本コーナーで紹介したニューラルネットワークや、遺伝的アルゴリズムと並んで、「AI御三家」の一つといわれることがある。