日本情報技術取引所(JIET)の関西支部は、近畿圏の会員以外との交流を拡大している。2010年4月に就任した石丸博士支部長(リバティ・フィッシュ代表取締役)は、「官公庁、自治体、他のIT業界団体に加え、さまざまな企業や金融機関など、異業種の幅広い層との関係づくりを強化する」と、就任当初から、他支部と異なる趣向を凝らした活動を展開している。現在、同支部の会員は59社。これらの活動で認知度を高め、数年内には100社に拡大する構想を描いている。(取材・文/谷畑良胤)
関西圏でITに興味のある人が参加可能
石丸博士
関西支部長
今年3月、大阪市の大阪商工会議所で、「第2回JIET関西ビジネスセミナー」という同支部最大のイベントを開いた。昨年の同時期に「第1回」を開催しているが、会員以外も参加可能な大阪支部ならではのイベントだ。第2回の参加者は、前回に比べ倍の約200人に達した。「第2回は、初めてITベンダーなどの展示を併設した。これらが奏功し、予想を超えて盛況だった」と、石丸支部長は異業種交流の拡大に手ごたえを感じている。
関西圏には、ITに関連する業界団体が20以上ある。しかし、団体の横のつながりが薄く各団体間で連携策を模索していた。そこで、今年5月には、近畿圏の主要IT系団体・支部が「相互に情報交換しシナジー効果を生むために連携する」ことを目的に、「関西IT団体連絡会議(KISS=Kansai IT Synergistic Society)」という横断的な組織が設立された。JIET関西支部も加盟したが、この“前哨戦”の活動は、すでに同支部が体現している。
JIETの各支部が開く「商談会」などのイベントやセミナーは、通常、会員限定で実施する。関西ビジネスセミナーは、まったく別枠で関西圏のIT業界に絡むすべての人を対象にした有識者の講演などがある。聴講者・参加者は、IT業界関係者だけでなく、ユーザー企業や行政機関の関係者、大学生、専門学校生らも参加できる。
「私を筆頭に、支部の岩下隆祐幹事(マクティズム代表取締役)など4人で、『イベント委員会』を置いている。会員以外のギャラリーを集め、会員が自分たちの役割を再発見しようと、趣向を凝らしたイベントを企画して開催している」(石丸支部長)と話す。JIETの認知度が高まることで、会員の増加に寄与するだけでなく、エンドユーザーの開拓や、次世代のIT業界を担う人材獲得などに役立つと考えている。
7月に開催した「第2回JIET営業セミナー」には、JIET以外のIT関係者も集まった
営業セミナーでは団体横断で人脈形成
石丸支部長は、JIET以外に「Rubyビジネス推進協議会」の運営にも携わっている。Ruby黎明期に近畿圏のIT業界へ浸透させた立役者の一人だ。これらの経験からJIET内の活動にとどまらず、視野を広げることによる成功体験をもっている。例えば、リバティ・フィッシュでは、府の委託事業で「福島(JR大阪環状線福島駅界隈)をおもしろく歩くデジタルマップ」の開発を獲得した。これは業界横断の活動をするなかで、知り合った金融機関が石丸支部長に話をもたらした。
関西ビジネスセミナーだけでなく、関西支部では非会員も交えたイベントを他にも企画・開催している。今年7月には、「第2回JIET関西営業セミナー」を開き「IT業界における契約社員の雇用について」をテーマに他のIT系団体の関係者を招き、座学やグループワーク、名刺交換会などをした。
大阪産業創造館には、「第1回」の2倍になる40人以上のITベンダーの営業担当者らが集まったが、石丸支部長は、「他の団体と人脈づくりができた。実案件の拡大に寄与するはずだ」と継続的な開催を決めている。関西支部が月1回開催している「商談会」は、定員50人の枠が毎回埋まる。「近畿の景気はいいはずだ」(石丸支部長)。この商談会に関しても、サブ商談会として、「人の確保で、緊急性の高い案件を取引する」(同)という目的で「情報交換会」という場を設けている。
JIET関西支部を大きくしたい。新しいビジネス・マッチングの機会や人材リクルーティングの場を広げたい──。石丸支部長の大望は尽きない。大阪では、2021年に「関西ワールドマスターゲーム」の開催が決定している。25年に向けては、「国際博覧会(万博)」の誘致を進めている。「異業種が手を組み、経済を盛り上げていく必要性はますます高まっている」(石丸支部長)と、次の一手に思いを巡らせている。