一般社団法人 みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴
松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京・八王子市生まれ。72年、慶應義塾大学工学部管理工学科卒業。94年から山梨学院大学経営情報学部助教授に就任し、現在、同学部教授。00年11月、きっとエイエスピーを設立し、代表取締役社長に就任。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
学ぶべきプログラミング言語を選択するとき、何を基準にされているのだろう。流行りだろうか、学びやすさだろうか、就労機会の多さだろうか、それとも報酬の多さだろうか。プログラミング言語の流行りは大変移ろいやすく、十年、二十年後の自分の将来を見据えたうえで、自信をもって適切な選択をすることなどできそうにない。ましてや、市場が注目する技術分野がクラウド、ビッグデータ、IoT、人工知能と急速に広がり、次々と変化する近頃のような時代の流れのなかでは、二、三のプログラミング言語を習得した程度でプログラミングを職として生涯糧を得ることなど約束されるとも思えない。今、学ぶべきプログラミング言語を選択すること自体が難しい。
私が最初に学んだプログラミング言語は大学2年の数値解析の授業でのFORTRANである。その後アセンブリ言語、COBOL、Algolなどを学び、親しかった先生の個人指導でLISPを、卒業研究でSNOBOLを学んだ。そのなかでもLISPを学ぶ機会を得たことが、プログラミング概念や言語を学ぶ基礎となり、私の経歴に大きな影響を与えている。LISPは単なるプログラミグ言語ではなく、その処理系をそれ自身で記述できる機械語であり、記述されたエディタやデバッガを含む統合開発環境でもある。メッセージ駆動やオブジェクト指向といった概念も、LISPで記述し、LISP内に取り込むことができる。このことからわかるように、LISPを理解すれば、プログラム開発環境の仕組みや新しいプログラミング言語の概念を理解するための基礎が身につく。LISPから派生したSchemeやClojureでも同じようなことができる。また、プログラミング言語の意味的拡張をそのプログラミング言語自身で記述するメタプログラミングという概念を実践できるPythonやRubyでも類似の効果が期待できる。
技術的概念や開発環境が急速に変化する市場では、求められるプログラミング言語が次々と変化し、複数のプログラミング言語を組み合わせて開発することがあたりまえとなる。そのような環境の変化に順応し続けるためには、新しいプログラミング概念や新しいプログラミング言語を自らの努力で習得できる基礎的な能力が必要になる。プログラミング言語を学ぶ基礎となるプログラミング言語を一つ身につけておくことをお勧めする。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。