お客様が求めるのは今も昔も「ビジネスの成果」だ。ただ、従来は事業課題の明確化はお客様の役割で、それを請けて手段を提供するのがSI事業者の役割だった。しかし、手段提供ビジネスは今後縮小していく。一方でテクノロジーの進化と適用範囲の広がり、ITとビジネスの一体化が進んでいく。ITを前提に新しいビジネスモデルやビジネスプロセスの創出が期待されている。

　ここに正解はない。現場ユーザーとSI事業者が一緒になって、これからの正解を探索し、創り出していかなければならない。「共創」が叫ばれるようになったのは、そんな背景からだ。正解のないところに正解を創りださなくてはならない。デザイン思考はそのための有効な手段となる。そうやって創った正解が、うまくいかないこともある。その失敗を許容して世の中の反応や変化に即応し、情報システムを変えていかなくてはならない。アジャイル開発やDevOpsはもはや前提となる。

　物販はクラウドに置き換えられ、工数は自動化に吸い取られていく。この現実に既存の収益構造は対応できない。その一方で、ビジネスの武器としてのIT需要は高まっている。この変化を自分たちの成長のチャンスに変えるためには、新たな収益構造を模索し、そこに対応できるスキルを育てていかなければならない。

　ITを生かしたビジネス開発をお客様と一緒に進めてゆく「共創」、これを効率よく具体化する「デザイン思考」、失敗を許容し変化に即応する「アジャイル開発とDevOps」が、ビジネス成長の原動力となる。この組み合わせを実践できるスキルがSI事業者には求められる。

　「そんなことができる人材はいないよ」。それは何処も同じだ。だから、そういう人材を育てていくしかない。どう教えればいいのかわからないというのも言い訳だ。自分で新しいことにチャレンジし、学びを楽しめる人材は、少数ながらどんな企業でも必ずいる。そういう人に任せてみてはどうだろう。もしかしたら、そんな人材を火消し役に回してはいないだろうか。旧態依然としたプロジェクトのプロマネにアサインしていないだろうか。そんなことをしている限り、彼らは力を発揮できない。できることから一歩を踏み出してみてはどうだろう。自分たちの未来を手に入れるために、できることはある。