二十年近くシンクライアント・ビジネスに関わってきたが、ここにきて、小規模ソリューション・ベンダーの皆さまからクラウドサービス化のご相談をいただくことが増えてきた。その理由は、「ユーザーが求めているから」であり、これまで通りレガシー環境でのソリューションの提供を続けながら、クラウド環境への移行を希望するユーザーの需要に徐々に応えていきたいという。業種によっては、国の指針によりクラウド化する必要に迫られているものもあると聞く。クラウド化の動きが、いよいよ小規模ソリューション・ベンダーにまで広がってきた。
また、ここ数年、一般社団法人全国設備業IT推進会という団体で設備業の皆さまのクラウド利用を支援する活動のお手伝いをさせていただいている。先日、その活動の一環として、ITベンダーの皆さまと一緒に「今、設備業の皆さまがどのようなITソリューションを求めているか?」というテーマで意見交換を行う機会を得た。その際、設備業の皆さまからは、「こんなITソリューションが欲しい」という具体的な応えは返ってこなかった。聞こえてきたのは、「現場で写真を撮ったら、事業所に戻るまでにレポートの作成をすましておけるようにできれば」というようなITソリューションの運用や利用環境の改革を求める声だった。すでに必要な業務用のITソリューションは手に入れており、それがパソコンのアプリか、スマートフォンのアプリか、クラウドサービスかへのこだわりはなく、業務効率を上げ、人的・時間的要因を削減できる利用方法や環境の改革を求めていることが改めてわかった。
さらに、知己のITベンダーからは、今年はRPAツールの拡販を主軸に事業展開をするという方針が決まったという話を聞かされた。認知技術を活用したソフトウェアロボットによる業務プロセスの効率化・自動化を図る取り組みであり、人工知能を活用して仕事の仕組みを変えるというブームの流れに乗るものである。
このようにソリューション・ベンダーやユーザーの皆さまの生の声を通して垣間見えてくるのは、今、ITユーザーが求めるのは新たな業務ソリューションではなく、すでに利用している業務ソリューションの利用環境の改革であり、その利用方法の効率化であると断言してもよいのではないだろうか?
一般社団法人 みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴
松田 利夫(まつだ としお)

1947年10月、東京・八王子市生まれ。72年、慶應義塾大学工学部管理工学科卒業。94年から山梨学院大学経営情報学部助教授に就任し、現在、同学部教授。00年11月、きっとエイエスピーを設立し、代表取締役社長に就任。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。