日本情報技術取引所(JIET)は、各支部で実施している商談会を通じ、会員向けにシステム開発案件などを紹介することが主な活動となっている。JIETを通すことにより、不健全な多重下請けが排除されるため、IT業界の健全な発展に貢献することも期待されている。そうしたなかで、会員サービスのさらなる充実を実現し、会員のビジネス創出の機会を増やすために活動しているのが、交流委員会だ。なかでも、外部との交流を目的とした「CLUB JIET」の活動に注力している。(取材・文/畔上文昭)
交流委員会の役割は“営業”
植木 准
交流委員長
「活動のほとんどはJIETの営業社員」と、交流委員会の役割について、植木准・交流委員長は説明する。最大のミッションは、会員の「ビジネスの創出」の機会を増やすことにある。そのためには、より多くの会員を集めることに加え、より広い地域をカバーすることが求められる。JIETは、バンコクや台北、ソウルに支部を置き、さらなる展開を模索するなど、海外展開に積極的な団体である。
一方、国内は北海道から沖縄まで、11の地域に支部を置くものの、空白地域も存在する。「交流委員会では、国内に新しい支部を設立するための活動も担っている。現在は11支部あるが、今後は中国地方か四国地方に支部を設置したい」と、植木交流委員長は語る。JIETは昨年、沖縄と北陸に支部を設置した。中国・四国地方は、最後の空白地域になっている。
3カテゴリのCLUB JIET
近年は国内の好景気を反映し、システム開発案件が過多の状態が続いており、会員からは案件紹介よりも人材紹介を望む声が多い。とはいえ、この追い風状態がいつまでも続くとは限らない。風向きが変化する前に、次の一手を打っておく必要がある。交流委員会では、こうした市況の変化や、IoTやAI(人工知能)といったトレンドに対応するために、外部との交流の活性化を目的として、CLUB JIETを運営している。現在は、大手ソリューションベンダーが対象の「CLUB JIET【SV】」、ユーザー企業が対象の「CLUB JIET【EU】」、異種業界団体が対象の「CLUB JIET【AC】」(アソシエーション)の三つをCLUB JIETのカテゴリとして用意している。
CLUB JIET【SV】の活動目的は、大手ソリューションベンダーとJIET会員の接点をつくること。とくにJIETの会員は小規模な企業が多いため、比較的顧客に提案しやすい中小規模向けのソリューションをもつベンダーとのコラボレーションを目指している。また、そうしたソリューションはパートナー経由での展開が不可欠なため、ベンダーにとってもメリットがある。「以前は賀詞交歓会で記念講演と題し、識者の方に講演をお願いしていた。トレンドを把握するという意味で会員にとって価値はあるが、ビジネスには直接つながらない。そこで、記念講演をやめて、CLUB JIET【SV】の会員がソリューションをアピールする機会に変更した」(植木交流委員長)。ベンダーとJIET会員の両方にメリットがあるとして、好評を博しているという。
CLUB JIET【EU】の活動目的は、ユーザー企業とJIET会員の接点をつくること。CLUB JIETで最初に始めた活動だが、目的を見出すことが難しいとして、今後の展開を模索している最中である。
現在、JIETとして最も注力しているのが、CLUB JIET【AC】の活動である。IT以外の各種団体に参加してもらうことで、JIET会員の異業種の状況を勉強し、今後のビジネスに生かしていくことを期待している。
「同業だけで集まっていては、新しい情報が入ってこない。今は、どの業界でもIT活用が不可欠となっている。JIETの会員が必要とされるケースは必ずある。CLUB JIET【AC】は、そのきっかけづくりの場としていきたい。また、IT産業は受け身でいてはいずれ生き残れなくなる。異業種の状況を把握し、IT産業から積極的に仕掛けていかなければいけない。そういった意味でも、やりようによってCLUB JIET【AC】はおもしろい活動になっていく」と、植木交流委員長は期待している。現時点で参加しているのは、東京中小企業家同友会。今後は医療業界や司法書士業界など、IT化に危機感を抱いている業界にアプローチしていく考えだ。