アマゾンジャパンは8月29日、決済サービスAmazon PayでQRコードを用いた実店舗での決済対応を開始すると発表した。すでにLINEのLINE Pay、ソフトバンクとYahoo!のPayPayなど、同様のQR決済システムが次々と登場する中での参戦。手数料が一定期間0%などと、デファクト争いは熾烈な様相を呈している。
アマゾンは物流を含む流通全体の業界図を塗り替えるリーダーとなったが、決済手段に広く入り込むことで流通と金融の融合という新たな世界に挑もうとしている。
貨幣の機能には、交換手段、価値尺度手段、価値貯蔵手段の三つがある。交換手段は、商品やサービスの交換を仲立ちし媒介する機能である。価値尺度手段は、商品やサービスの価値を測定する基準となる機能である。そして価値貯蔵手段は、商品やサービスで得た経済的な価値を蓄える手段である。
1個100円のリンゴは、100円玉一つと交換が可能である。決済サービス側で1ポイント1円で換算され、さらに利用者の許可によってクレジットカードと連携し、クレジットカード側では利用者の銀行口座からの引き落としが可能になると、マーケットでは100円玉は不要になり、決済サービスとの連携だけで事が足りる。
消費面だけでなく、給与の支払いなど収入面でも決済サービスを利用するようになると、クレジットカード会社も銀行も不要になる。
決済サービスのポイント制度は、交換手段であり、価値尺度手段であり、価値貯蔵手段にもなる。つまり「信用」という点を除けば完全に貨幣を代替する。
野村総合研究所が2018年2月に発表した「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によると、現金決済のインフラを維持するために、年間約1兆円を超える直接コストが発生している。一方、海外に目を向ければ、すでに韓国などでは急速にキャッシュレス社会が広まっている。
実際、私の高校の先輩が経営する屋久島のレストランでは、当日のお客様が全員クレジットカード決済の日があり、売り上げの集計、レジの中のお金の確認、翌日の釣銭の準備などでずいぶん楽になったという話を聞いた。
「昔は、紙幣とか硬貨とか使っていたのだよね」という日はそう遠くない。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。