12月30日の「TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)」発効に伴い、改正されていた著作権法の規定が施行される。改正点は複数あるが、最もインパクトが大きいのは著作権の保護期間が延長された点だろう。原則、著作者の死後50年が70年に、団体名義の著作物は公表後50年から70年に延長される。併せて、著作隣接権のうち、実演とレコードの保護期間も70年に延長されている。
さらに来年1月1日には、平成30年改正著作権法が施行される。改正のポイントは、昨今のデジタル・ネットワーク技術の進展と、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)などの革新的な技術によって新たに生まれるさまざまな著作物の利用ニーズに対応するため、著作権の制限規定が拡大された点だ。
例えば、AIによるディープラーニングなど、著作物を享受(鑑賞など)する目的でなく、機械的・技術的な利用において権利者の利益を害さないような利用については、著作権者の許諾なく利用できる規定が盛り込まれた。
また、情報解析サービスのような新たな知見を創出するサービスに付随して著作物を利用するような、著作権者に及ぶ不利益が軽微なものについても権利制限の対象に加えられた。
これらは著作権法の改正だが、今年11月にはソフトウェアメーカーが許諾していないシリアルコード、プロダクトキーを単体でインターネットオークションなどに出品したり、技術的にプロテクトされたゲームソフトのセーブデータを改造するツールやプログラムを譲渡したりする行為などが不正競争行為となる、改正不正競争防止法が施行されている。本改正にはコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)も政府の審議会でヒアリングを受け、法改正に向けた情報提供や要望を行ってきた。
こうした改正点を含めて著作権法や不正競争防止法について、みなさんはどれほど知識をお持ちだろうか。インターネット・ソフトウェア業界で仕事をする上で、これらの法律の正しい理解は必須である。ACCSは、引く続きソフトウェア業界の健全な発展と権利保護のため尽力していく所存だが、改正法のポイントを分かりやすく解説するなど、情報提供にも努めていきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。