「共創」(あるいは「協創」)という言葉を目にする機会が増えている。これは、企業が、さまざまなステークホルダーと協働して、ともに新たな価値を創造するという概念「Co-Creation」の日本語訳だ。この言葉が語られるようになったのは、ビジネス・スピードの加速や業界の垣根を越えた厳しい競争の出現により、もはや一企業だけで競争優位を生みだし続けることは困難となったからだ。
そんな共創とは、具体的に何をすることなのだろう。以下の三つの共有に触れることとする。
一、技術の共有。お客様にはない圧倒的な技術力を提供すること。ITを武器に事業の差別化や競争優位の実現を目指すお客様は、ITをコア・コンピタンスの一つと捉え、自らの本業として内製化に舵を切るだろう。しかし、高い技術力を持つ人材が揃っているわけではない。これを提供することだ。技術力とは、少ない手間で最大のパフォーマンスを発揮できる力のことを言う。例えば、実現したい機能を可能な限り少ないステップ数でコーディングできる力や、クラウドを駆使して必要なシステムを1日にいくつも構築できる力だ。ビジネス・テーマが決まれば、新しいテクノロジーを駆使したビジネス・プロセスをデザインできる力も必要とされる。
二、価値の共有。お客様と一緒になって、この取り組みを成功させたいという誠実さと熱意を示すこと。つまり、お客様のビジネスを成功させるため共通の価値観を共有できなくてはならない。お客様からすれば、自分たちの一大事を一緒になって取り組むことになるので、自分たちと同じ価値観を共有できる信頼に値する人格が求められる。
三、体験の共有。企業の成長や生き残りには、不確実性への対処が必須だ。アジャイル開発やDevOps、クラウド、そしてコンテナやマイクロサービス、サーバーレスなどの技術が注目されるようになったのは、変化に迅速に対処しなければならないからだ。私たちは、こんな新しいITをお客様の模範であり教師となって、体験を通じてお客様を指導する。
このような三つの共有を通じて「この人たちと一緒に取り組みたいと」と相手に惚れさせ、ITの新しい常識をお客様に感染させ、一緒になってビジネスを生みだすことが「共創」の実践である。
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
略歴

斎藤 昌義(さいとう まさのり)
1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。