「SIにおいて『納品して終わり』は損をしている」が、スカイの河村正史代表取締役の持論である。導入した業務アプリケーションによって、「ユーザー企業がしっかりと業績を伸ばせるよう支えるほうがビジネスとしては重要」だと説く。ユーザー企業の売り上げや利益が増えるよう、継続してデータの分析やシステムを手直しをする。成果が出れば、ユーザー企業はほぼ必ずといってよいほど追加のシステム投資を行い、結果として「初期投資の2倍、3倍のビジネスボリュームになる」と話す。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 スカイ
所在地 東京都豊島区
設立 1985年
事業概要 中小規模ユーザー向けの業務アプリケーション開発が強み。エステサロン向け業務管理システムや自動車整備管理業務システム、工事取引管理業務システムなど多数のパッケージソフトを開発。組み込みソフト開発も手掛ける。JASIPA(日本情報サービスイノベーションパートナー協会)でエンドユーザー部会部会長を務める。日本インストラクタープロゴルフ協会(JIPGA)認定プロインストラクター。
URL:https://www.skyjapan.co.jp/
成果が伴えば受注規模の倍増も
河村正史
代表取締役
「納品したあと」のビジネスが続かない点が、「中堅・中小SIerの収益力を押し下げる要因になっている」と、河村代表取締役は考える。とりわけ客先常駐や下請けの方式で受注した仕事は、開発が終わればそれっきりになることが多い。これでは際限なくつくり続けるだけで収益力は高まらない。そうではなく、納品したあとも継続してシステムを手直しして、「ユーザー企業の売り上げや利益の拡大に直接的に役立つサービスを提供してこそ、SIerの利益増につながる」と話す。
スカイでは、開発した業務アプリケーションの保守契約を結び、ユーザー企業の同意を得た上で、業務データを分析。小売り向けの販売管理システムであれば、「売れると思って仕入れた商品がなぜ売れないのか」、逆に「なぜこの商品が売れているのか」といった分析に役立てている。
分析によって課題解決につなげるなどの具体的な成果を挙げることができれば、例えば、分析手法をパターン化して、業務アプリの新規アドオン機能として販売。データ分析の専門家でなくても最適解を導き出せたり、顧客管理システムを手直しして、エンドユーザーの消費動向をより深く探れるようにする案件受注につなげたりと、新しい商談を膨らませていく。業績拡大に役立てば、「初期受注の2倍、3倍のビジネスボリュームになることも多い」(河村代表取締役)と話す。
こうした手法は、まとまった額の情報システム投資予算を確保しにくい中堅・中小規模のユーザー企業にとりわけ有効だという。実際、スカイが受注する案件は、大手SIerが提示した見積金額が予算に合わず、河村代表取締役のところに話が回ってくることもある。スカイでは、中小規模ユーザーの予算に合うよう、できる限りの工夫をしてきた。
「業務」起点で「異業種」へ横展開
スカイの主なコスト削減策は、「業務」的な内容が似ていれば、まったくの「異業種」でも積極的にソフトウェア部品を応用してきたことだ。
一例を挙げれば、エステティック・サロン向けの業務アプリでは、利用者のどの部分にどのように施術したのかを記録する。顔や体の図に施術内容を書き込む方式だが、実は自動車整備の管理手法と非常に似ていることに気づいた。自動車の図があり、どこを修理したのかを記録する点が共通している。予約受付の仕組みもエステサロンと自動車整備は非常に似ており、エステサロンのソフトウェア部品を応用することでコストを削減している。
エステと自動車整備は一見すると接点がないように思えるが、業務的に見ると意外なほど共通項が多い。業務的類似性を見出して異業種へと積極的に横展開していくことで、中小ユーザーの予算に見合うコストでビジネスを伸ばしてきた。
スカイの創業は1985年。東海大学で通信工学を学んだ河村代表取締役は、組み込みソフト開発の仕事に就いたのちに起業。組み込みソフト開発を請け負う仕事から始まって、業務系の客先常駐や下請けも手掛けるようになった。中小規模ユーザー向けの業務アプリ開発を本格的に始めたのは98年頃。それでも受託開発の割合が50%を下回らないようにしてきたが、08年のリーマンショックをきっかけに完全に手を引いた。
自社開発のソフトウェア部品を活用したビジネスが軌道に乗ってきたこともあるが、それ以上に「納品して終わりにせず、ユーザーの業績を伸ばして、さらなるシステム投資を引き出す現行のビジネスモデルをより発展させる」ことに、経営リソースを集中するためでもあった。
ここ20年来のユーザー数は右肩上がりで1000社余りに到達。成果にこだわるシステムづくりの噂を聞きつけた業種ユーザーから引き合いがきたり、スカイが開発した業務アプリを自社のSIに採用するパートナーも全国10社ほどに増えた。今後もユーザーの業績拡大と追加投資の好循環を続けていくことでビジネスを伸ばしていく。