業務コンサルタントとしてRPAの仕事のお手伝いをすることがある。RPAとは、Robotic Process Automationの略で業務の自動化を指す。自動化を進める際には、まずどのプロセスを自動化するかの選定が、最初のタスクとなる。
「わが社でもRPAを導入して省人化を図り、コスト削減をしたいのだが――」。経営者からの依頼というものは多くの場合、このように漠然としている。そこで、まず手を付けるのが現行業務の整理だ。私の所属するチームは「業務機能分類」という基準を持っているので、その基準に従って業務を整理していく。
その中で、ルールベースができており、自働化できるタスク、かつ企業の競争力の源泉でないタスクを絞り込んでいく。タスクには何事にも例外は発生するので、逃げ道もつくる。
タスク整理においては、現場担当者の反対が大きな壁だ。自分たちの仕事が自働化によって無くなってしまうのではないかと、「こんなケースもある」「あんなケースもある」とイレギュラー案件を持ち出し自分以外はできないことを主張する。しかし、その人が休みで居なくても何とか業務は回っている。会社が潰れることはない。
このようにして、対象タスクを絞り込むのにかなりの工数がかかるが、そこまでくればRPA化の難所の8割は超えている。いったん自働化してしまうと、なぜこれまでやってこなかったのだろうかと思うくらいに省力化ができる。システムに合わせて入力していくだけで、圧倒的に全体の処理も速くなる。
このように、今あるデータを処理するというタスクに対してRPAはめっぽう強い。今後、AIの力も借りてますます進化するであろう。
では、何ができないかというと、これから起きることに対する対応や、これから何かを起こすことだ。まだ起きていないことを、処理することはできない。
すでに起きたことの処理を行う仕事は徐々に自働化されて無くなり、これから起きることに対処する仕事が残る。事務所という場所が無くなり、事務処理という仕事も消える。経営や戦略立案、データ解析、商品企画・設計、そして営業といった仕事は、これからも重要性を増すであろう。
何年か後に消える仕事というのは、急にではなくジワジワと消えていく。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。