国の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、「自動運転」の課題解決に取り組んでいる。2018年度までの5カ年は主に技術的な課題を取り上げ、18年度から22年度までの第二期では、ビジネス的な採算性などを含めた「社会的受容性」の課題をメインに位置付ける。内閣府がとりまとめ役となり、国土交通省や警察庁、総務省、経済産業省、文部科学省などが参加している。18年度は一期と二期が重なっている。(取材・文/安藤章司)
SIP自動運転では、自動運転を「協調領域」と「競争領域」に分けた上で、自動車関連メーカーが協調して取り組むべき領域で活動している。一期の成果の一つに道路の高精度三次元地図データを整備する「ダイナミックマップ基盤」がある。ダイナミックマップ基盤は16年に株式会社化し、19年3月末までに全国の高速道路2万9000キロ超の基礎的な三次元地図データの販売をスタート。このデータをもとに自動車メーカーやサービス事業者が競争優位や付加価値を高めるデータを付加して商品化する仕組みだ。
二期で重点テーマの一つに位置付ける「社会的受容性」とは、具体的には法整備や保険商品の開発、採算性、利用者の理解などの項目をベースに、「社会的な受容性が高まったと言えるのはどういった状態であるのか」を研究する。例えば、自動運転車の保険料の設定や、トラックやバスで自動運転を行った場合の損益分岐点の変化といったビジネス的側面が挙げられる。また、「商用車」と「マイカー」では購買動機が異なるため、二期ではそれぞれ別の進展のあり方を想定している。
図は、商用車とマイカーの自動運転の進展の違いを示したものだ。技術的な観点から見ると、バスやトラックは路線が決まっていることが多いため自動運転を適用しやすい。それに対してマイカーは自由度が高いため自動運転は何らかの技術的突破口がなければ大幅な進展は難しいと見ている。ビジネス的な観点からすると、商用車は初期投資がかかったとしてもトータルで収益性が高まるのなら受け入れやすい一方、マイカーの場合は車両価格が極端に高くなってしまっては普及は難しいなどの違いがある。(つづく)