去る10月29日、奇しくも同じ日に富士通、NECの国産ベンダー両雄は2020年3月期の第2四半期決算を発表した(1799号3面で詳報)。近年取り組んできた構造改革が実り、いずれも改善傾向ではあったが、事業内容は顧客のIT投資環境に依存する御用聞きビジネスの域を脱しておらず、自ら市場を創出できるような成長事業を打ち立てられていないのは共通の課題。停滞を打破して大きく変わろうと、もがいているのも共通だ。
週刊BCNは11月11日発行号をもって1800号を迎えた。近年、号数が“キリ番”の紙面では、「編集部総力特集」と銘打ち、週刊BCN編集部が選ぶタイムリーなテーマに沿って、通常号よりも大型の特集を掲載してきた。今号のテーマは「“レガシー”の逆襲なるか?」だ。
ここでいうレガシーは、さまざまな意味を含んでいる。法人向けIT市場で長年活躍してきたITベンダーが蓄積してきた強み(=遺産)、ビジネス環境の変化によってもはや役に立たなくなってしまった過去の成功体験(=過去の遺物)……。週刊BCNが長年取材してきた領域で、近年、コモディティ化が進んだり、ビジネスモデルのアップデートができないプレイヤーが増えて停滞気味に見える市場をいくつか選び、現状の課題や「Windows 7」のEOSや東京五輪というビッグイベントが終わる2020年以降の展望を探ってみた。
PC、エンドポイントセキュリティ、複合機・プリンタはいずれも従来のビジネスモデルによる成長の限界にぶち当たり、生き残りのための新たな価値創造が待ったなしの状況だ。また、IT業界ではオープン化以前の情報システムをレガシーシステムと呼ぶことが多く、業界流行語となった「2025年の崖」の主要因として槍玉に挙げられている。まさにレガシーシステムの構築で実績のあるSIerが、蓄積してきた強みを生かしてビジネスモデルをどう変革していくべきなのかも、取材を基に考察している。
これだけの長い間IT産業を取材してきた立場から、歴史を踏まえて現在の市場の少しだけ先を指し示す情報発信をしていくことは週刊BCNの責務だと考えている。この1800号は、これまで週刊BCNを支えてくれた読者に対する礼状であり、これからも週刊BCNを必要としてくれる読者への挨拶状と言える内容だと思っている。引き続き、週刊BCNをよろしくお願いいたします!
週刊BCN 編集長 本多 和幸
略歴

本多 和幸(ほんだ かずゆき)
1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、2013年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。2018年1月より現職。