デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉の本質がやっと浸透してきたように思う。システムベンダーがDXという言葉先行のセールスを展開したフェーズを終え、DXで何を変えようとするのか、その目的を設定しシナリオを構築しない限り効果が出ないことも浸透してきた。

 そうなるとDXは特別なことではなく、本来の課題を設定し、最適なソリューションを導入するというインテグレーションと変わらないことがわかる。逆にこれまでもシステムを導入することが目的となり、何のためのシステム化なのかを明確にせず、導入することが目的となっているプロジェクトが多かったということだと思う。

 一方、持続可能な開発目標(SDGs)も、単なる旗印ではなくこれからの最も基本的なベースとなる考え方なのだということが浸透してきている。

 数年前、SDGsを語り中途半端な導入コンサルが流行した頃に比べると、ユーザーの理解は進んだ。SDGsの面から見たらこの施策はどうだろうか、という新しい判断軸を持ち始めてきている。こうなるとDXの導入に関しても、SDGsという観点を明確に示していく必要が出てくる。新たにSDGsの実現のためにDXを考えるということではなく、今やろうとしていることがSDGsの視点からみたらどうなのか。その考察を常に入れ込むことで、業務改善に加えSDGsへの貢献もあわせて実現することができるのではないかという視点が重要である。

 現在、DXへの関心とSDGsへの対策は別物として捉えられることが多いが、同時に実現可能なものとして企画段階から取り入れることで、双方の実現目標にプラスになるはずだ。

 ある電子決済のソリューション提供会社は、発展途上国への電子決済の導入を、安全性や利便性、効率化だけではない価値があると指摘する。それが途上国の口座履歴を持たない主婦などの与信情報となり、融資や与信枠の設定を可能とし、生活水準の向上に役立つ。

 このようにDXを進めていく上で、SDGs視点でプラスの価値を生むことはできないかと考えることがスタンダードになってくると思う。価値の分散化とともに価値基準にSDGs視点での価値をあわせて考えることが必須となるのではないだろうか。

 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation  Founderなどを務める。