視点

DXの本質を探る

2021/12/22 09:00

週刊BCN 2021年12月20日vol.1904掲載

 久しぶりのリアル飲み会。知り合いのコンサルタントがこんなことを言った。

 「DX、DXっていうけど、これまでやってきたBPR(Business Process Re-engineering)とやっていることは変わらない。やはり毎度のバズワードになるのだろうか」

 私はDXを三つのタイプに分けて考えている。

 一つは「やってくるDX」。これは好む好まざるにかかわらず、私たちが変化の波に乗らざるを得ないものだ。例えば、自治体DX。デジタル庁と各省庁、さらに基礎自治体を巻き込んで行政の在り方がデジタルへシフトする。するとマイナンバーの利用が当たり前になる、ITインフラの整備や機器の更新も進む。

 二つめは「大切なことに時間をシフトするDX」。いわゆる自動化、省力化、さらにはBPRがこれにあたる。デジタルの力で迅速に正確に大量に処理を行う。空いた時間で本来やるべきだった顧客への個別対応やニーズの掘り起こしなどを行う。既存の業務を高効率化するだけでなく、新規の業務でも設計時にデジタル・ファーストで臨む意識づけが重要だ。

 そして三つめが「攻めのDX」。デジタルとインターネットを使って、これまでになかった新しい市場を創り出す。例えば、少し古くなるがNetflixやiTunesがこれにあたる。もう一つの攻め方は既存市場にデジタルの力を駆使した新規参入。既存の市場に全く新しい手法で参入し、旧来の事業者領域を破壊するデジタル・ディスラプター(Digital Disruptor)もこのタイプだ。アマゾンのAWSやAirbnbなどの例がある。これまで安定と思われていたプラットフォームの主役が一夜にして入れ替わる。

 ビジネスを進めるうえでは、これら分類した三つのタイプはいずれも重要だ。「やってくるDX」には対応しなければビジネスが継続できない。「大切なことに時間をシフトするDX」はビジネスの成長を意味する。そして「攻めのDX」は、まさに経営者が日々の経営を行いながらも次の一手を考える際に狙うべき道だ。

 私の知り合いが言うように、DXはバズワードで終わってしまうかもしれない。しかし、デジタルを使ったビジネスの変革は終わらない。生き残るためには変化し続けること。ここにDXの本質がある、と私は考えている。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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