〈企業概要〉
米Smartsheet(スマートシート)は2005年に設立。顧客数は190カ国で10万社以上。国内では22年から事業展開し、日本法人はグローバルで4カ所目の拠点として23年に設立。国内では大手ゼネコン、製薬会社などでノーコードプラットフォーム「Smartsheet」の導入事例がある。
グローバルで実績のあるソリューションベンダーの国内参入が続いている。日本法人を立ち上げ、国内でビジネスを本格化する外資系ベンダーは、どのような勝ち筋を思い描いているのか。第9回は、Smartsheet Japanに戦略を聞く。エンタープライズ向けに業務マネジメントのプラットフォームを提供する同社は、柔軟性の高い製品に、グローバルで実績のあるテンプレートやパートナーの知見を組み合わせることでより迅速に業務効率化が実現できると訴求。間接販売で製造業、建設業など幅広い業種への拡販を目指す。
(取材・文/堀 茜)
プロジェクトを一元管理で可視化
多くの企業がDXを推進し業務効率化を目指す中、同社は効率的なコラボレーションを実現し、新しい時代の働き方を実現するノーコードプラットフォーム「Smartsheet」を提供している。基本機能として、クラウド上で複数人が同時に作業でき、さまざまな形式で表示可能な「シート」、複数シートの重要情報をまとめる管理者向けの「レポート」、レポート情報をグラフで可視化する「ダッシュボード」などを搭載。また、ワークフローのテンプレートを100以上用意するほか、ノーコードで作成できる。プロジェクト管理に必要な機能をそろえ、社外とのコラボレーション機能として、ライセンスのないユーザーも閲覧・編集できるといった特徴がある。
嘉規邦伸 社長
嘉規邦伸社長は、日本企業は「Excel」や「スプレッドシート」などでプロジェクト管理を行っているケースがまだまだ多いとして「Smartsheetによって大幅な効率化の価値を提供できる可能性が高い」と指摘。多くのユーザーが使い慣れたExcelなどの形式を踏まえたユーザーインターフェースを採用しており、「ITリテラシーが高くなくてもスムーズに使える当社製品は、日本で受け入れられやすい」とみる。
また、製品の強みを「柔軟性が高く、可変性がある点」と説明する。顧客のニーズに合わせてプロジェクト管理シートを自由に構築できる上、グローバルでの先行事例をテンプレートとして活用することで、より迅速な業務効率化が実現できるとする。2万のプロジェクトをSmartsheetで同時に管理した例もあり、誰がいつ何をしているか可視化できる。「業界業種を問わずに、業務効率化が実現できる」と強調する。
国内では、物流事業を行う企業が、倉庫管理システムをオンプレミスからクラウドに移行する際、プロジェクト管理に導入。実用的なテンプレートを活用し、チーム全体で現状や進捗を把握することで、4カ月でプロジェクトを完了できたという。
"ソリューション売り"の基盤に
販売戦略として、同社は原則間接販売で日本市場での浸透を目指す。2月にSB C&Sとディストリビューター契約を締結。「注力商材としてパートナーに紹介していただいており、顧客のニーズがあったときに速やかに製品を届けられる体制になっている」(嘉規社長)と期待を寄せる。
パートナーが取り扱うメリットとして、嘉規社長は「パートナーが持つ業界や業務に特化した知見をSmartsheetに盛り込み、関連するサービスをバンドルして販売する『ソリューション売り』が可能になる」と説明する。パートナーがIT商材を取り扱う際、競合との差別化が難しいケースが多いが、Smartsheetはその柔軟性の高さを活用し、顧客にあった使い方を提案できると強調。パートナーが自社サービスを拡販する基盤として使うことで、ビジネスの拡大につなげてほしいと話す。
業界を問わず、あらゆる業務の効率化ができる製品だが、日本においては、大規模なオペレーションを行っている業界として建設、製薬、製造、流通小売り、テクノロジーの5分野に注力する。中でもソリューション売りの拡大に期待するのがテクノロジー分野で、ソフトウェア開発企業やSlerを想定する。開発のリソース管理や顧客向けの開発プロジェクトの管理にSmartsheetを活用、ユースケースを積み上げた上で、自社で有効だった使い方を顧客向けに提案してもらうというかたちでの協業を重視する。「SIerは国内で多くの企業のIT部門を支えており、当社にとっては、顧客としてもパートナーとしても非常に重要な協業相手になる」
国内での販売拡大にあたり、日本語化などのローカライズに大きな投資を行っており、カスタマーサポートも日本語対応している。嘉規社長は「当社製品を使っていただけば、お客様の仕事が日々楽になる。その価値を届けることで日本企業のDXを支援したい」と力を込める。