〈企業概要〉
米Verkada(ヴェルカダ)は2016年に創業。監視カメラ、センサー、入退室管理など物理セキュリティー製品の開発、販売を手掛ける。日本法人Verkada Japanは2023年4月に設立。
グローバルで実績のあるソリューションベンダーの国内参入が続いている。日本法人を立ち上げ、国内でビジネスを本格化する外資系ベンダーは、どのような勝ち筋を思い描いているのか。第8回は、監視カメラをはじめとした物理セキュリティー製品を提供する米Verkada(ヴェルカダ)日本法人のVerkada Japanに戦略を聞く。オンプレミスの製品とクラウドによる管理を組み合わせたハイブリッドクラウドにより物理セキュリティーを強化する特徴を訴求し、幅広い企業での利用を拡大する方針だ。
(取材・文/岩田晃久)
機能強化を重ね利便性を向上
ヴェルカダは米シリコンバレーで2016年に創業。グローバルで2万2000の組織に製品が利用されるなど、急成長を遂げる物理セキュリティーベンダーだ。日本法人は23年4月に設立された。
現在は、防犯カメラ、入退室管理、空気質センサー、アラーム、インターホン、訪問者管理、メールルーム管理といった製品を提供する。これらの製品をクラウドのソフトウェアプラットフォームで統合管理し、ハイブリッドクラウドのアプローチで物理セキュリティーの強化を実現している。各製品は大がかりな工事を行わなくても設置でき、シリアル番号を管理画面に入力するだけですぐに利用できるため、企業規模や環境を問わない。
複数の製品を組み合わせた利用を容易にしていることが強み。例えば、カメラと空気質センサーを組み合わせると、センサーが反応した際、カメラ映像を確認しながら、どういった事象が起きているのかを素早く把握できるので、迅速な対応が図れるという。また、クラウドで運用管理を行うカメラを導入する企業が増えているが、録画データをすべてクラウドに保存する製品の場合、ストレージの容量を圧迫したり、ネットワークの帯域が不足したりしてしまうケースがある。同社製品では、通信負荷を低減するため録画データを監視カメラ内に保存する構成も可能だとしている。
山移雄悟 カントリーマネージャー
日本法人の山移雄悟・カントリーマネージャーは「これまでも統合管理のニーズはあったものの、実現するソリューションがなかった。お客様からは『こういう製品を探していた』と当社の製品を評価していただく声が多い」と述べる。
同社は、頻繁に機能強化を図り利便性の向上を図っている。管理画面で性別や服の色などを指定したり、写真を取り込んだりすることで、カメラで撮影した映像から特定の人物を探す機能を提供してきたが、5月には自然言語による検索機能を追加すると発表。特定にかける時間を短縮できるという。そのほかにも、複数のカメラの映像をつなぎ合わせて、人物がどのように移動したのかを自動で表示する機能や、カメラに写る第三者に対してリアルタイムでマスキングをかける機能などを提供する。管理画面では製品が施設のどこに設置されているのかがフロアマップで分かりやすく表示されるため、運用も容易だ。これらの機能には、AIや機械学習技術が駆使されているという。
国内でもさまざまなユースケースが生まれる
日本法人の設立に合わせて23年4月にダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結し、現在は販売パートナーが約100社まで拡大している。山移カントリーマネージャーは「まだ成長の余地がある。全国のお客様に対してデリバリーできる体制を築き、特定の業種や業態へのアプローチを強化するために、新規の販売パートナーを開拓していく」と力を込める。パートナーには、エンジニア向けに無償トレーニングを実施するほか、製品の理解を深めるのを目的としたウェビナーを開催している。商談の際に、同社の営業担当者がオンラインで同席するといった取り組みも行っている。
販路の充実によって顧客層が拡大している。傾向としては、最初に監視カメラを導入し、その後、センサーなど他の製品を拡充する顧客が多いという。最近は、オフィスの引っ越しや新拠点を設立した際に、同社製品で物理セキュリティー環境を構築するといったケースも出てきているとする。
製造、教育、ヘルスケア、小売りなどがメインの顧客層だ。例えば教育では、健康増進法において未成年者の受動喫煙防止の徹底が求められているため、未成年が喫煙場所に近づかないように、監視カメラとセンサーを利用して管理するといったユースケースが生まれている。データベースなどと連携できるAPI機能「Helix」の活用も増加傾向にあり、小売業では、POSデータと連携させ、売り上げが好調なときの店舗の状況をカメラ映像で確認し、そこで得た情報を次の施策に生かすといったマーケティングでも利用されている。また、ある倉庫会社では、地震速報と連携させて、地震が起きた際、倉庫にどのような影響が出ているのかをすぐに把握するといった使い方をしており、山移カントリーマネージャーは「われわれが想定していなかったユースケースが生まれている」と語る。