〈企業概要〉
米本社は2013年に設立。グローバルにおいて8拠点で事業を展開し、顧客数は約1万2000社。日本法人は2020年に設立。同社のプラットフォームはNECやフリーなどで導入されている。
グローバルで実績のあるソリューションベンダーの国内参入が続いている。日本法人を立ち上げ、国内でビジネスを本格化する外資系ベンダーは、どのような勝ち筋を思い描いているのか。第7回は、米Pendo.io(ペンドドットアイオー)の日本法人に戦略を聞く。ソフトウェアのユーザー体験(UX)を可視化・分析するプラットフォームをSaaSで提供する同社は、UXの改善によりITツールの活用率を上げ、企業の競争力向上に寄与できるとする。今後はエンタープライズ向けの提案を強化し、市場を拡大する方針だ。
(取材・文/大畑直悠)
顧客と従業員向けの双方で支援
顧客向けにも、従業員向けにもソフトウェアをビジネスで活用する機会が増加する中、これらが意図した通りに活用され、成果を上げられているかが課題とする企業は多い。こうした状況を背景に、同社はソフトウェアの利用状況を可視化するプラットフォーム「Pendo One」のビジネスを拡大している。
具体的な機能としては、エンドユーザーのマウスの動きやクリックなどの行動を定量データとして取得するほか、アンケート機能により他者への推奨度などの定性データを収集し、分析を可能にする。また、エンドユーザーに対して、ガイドやメッセージを表示し、理想的な行動に誘導する機能なども備える。AIを活用して収集したデータからインサイトを提供し、ソフトウェアの改善作業を効率化できる。
花尾和成 カントリーマネージャー
花尾和成・カントリーマネージャーは「顧客向け、従業員向けの双方でUXの改善に利用されているが、どちらかと言えば、現在は顧客向けにソフトウェアを中心としたビジネスを展開する企業に使われる機会が多く、当社はこうした企業への支援を通して急成長した」と紹介。業界・業種によっては、段階的にソフトによるサービス展開に取り組む中、改善すべき事柄の優先順位付けなどに利用されるケースが増加しているとして、「必要性は確実に高まっている」と強調する。
従業員向けでは、総合不動産管理の東急コミュニティーがクラウドコンテンツ管理製品「Box」の活用率の向上を目的に導入。ガイド機能でBoxの活用を促進したほか、ITツールを使いこなせる従業員の特定につながり、今後はDX人材として育成するなどして社内のIT活用の底上げを図るという。
パートナーと市場形成へ成功体験重ねる
今後の戦略としては、企業の内製化やアジャイル開発の普及を背景に、エンタープライズ向けのビジネスを拡大する方針で、営業や支援体制の強化を進める。人手不足などの背景から自動車や金融、保険、流通といった業界での引き合いが高まっているとし、特に流通業のドライバーなど、従業員によってITリテラシーに差が出やすい業界において、ITスキルを標準化するニーズが生まれているとする。
パートナービジネスについては現在、マクニカや丸紅ITソリューションズ、三井情報といった10社前後の企業がリセラーとなっている。
花尾カントリーマネージャーは「提供するソリューションはまだまだ新しいテクノロジーということもあり、短期的にはパートナーと成功体験を重ねるなどして、しっかりと市場形成を進め、それからパートナーエコシステムを拡大させたい」と展望。また、「UXの改善を得意とするパートナーは現在足りていないピース」とみて、例外的に獲得を進める方針だ。
パートナーとの協業を進める上で、花尾カントリーマネージャーは「例えば、かつてのハードウェアビジネスのように、当社とパートナーがいて、その先にパートナーの顧客がいるというようなビジネスモデルは考えていない。パートナーが持つ顧客との関係性や、すでに資産として持つアプリケーションなどを展開する中で、当社と一緒に顧客を支援するかたちで協業を進めたい」と語る。
また、SIerをターゲットとしたビジネスも推進する。花尾カントリーマネージャーは「顧客に提供するシステムが実際にどう使われているかが可視化できれば、リプレースの際などの投資判断の材料にでき、次の提案につながる。昨今ではSIer自身が独自に開発したサービスを提供する流れがある中で、継続的にUXを改善できる環境を整えれば他社との差別化にもつながる。APM(アプリケーションパフォーマンス管理)でシステムが問題なく動いているか監視していても、どれほど使いやすいかをデータに基づいて判断している企業はまだまだ少ない」と訴える。