XDRとは
　Extended Detection and Responseの略。エンドポイント、ネットワーク、メール、クラウドなどに設置したセキュリティ製品の情報を統合・分析、脅威をいち早く検知して対応までを行うセキュリティ対策の概念。


　米Secureworks（セキュアワークス）は、XDRプラットフォーム「Taegis（テイジス）」をSaaSで提供している。幅広いサードパーティー製品との連携により、容易にXDRによるセキュリティー対策を実装できるのが強みだ。運用を支援するMDR（Managed Detection and Response）サービスも用意し、企業が利用しやすい環境を整えている。日本法人は、パートナー戦略を強化することで顧客獲得を進めていく考えだ。
（岩田晃久）

“点”ではなく“面”で

　同社は創業以来、マネージドセキュリティーサービス（MSS）、診断サービスなどのセキュリティーサービスを提供し、国内では大手企業を中心に多く顧客を抱えている。サービスに強みを持つ同社が、外販も行うXDR製品のTaegisを開発した理由について、日本法人の営業統括本部の松田敏幸・統括本部長 上級セキュリティエバンジェリストは「サイバー攻撃のスピードが上がっている中で、従来のようにエンドポイントやネットワークなどの“点”でセキュリティーを守るだけでは限界がある。システム環境全体を“面”で見て、（サイバー攻撃が）どこから侵入し、どのような目的で行動しているのかをいち早く検知して処置する体制が必要であるため、Taegisを開発した」と述べる。続けて「当社では、以前からAIを活用してサイバー攻撃に対応してきたが、最近は、さらにAIが進化している。そのAIのテクノロジーがXDRに有効に働くと考えたことも開発理由の一つになった」とも説明する。
 

高度な運用を実現するMDR

　Taegisの特徴は、米Microsoft（マイクロソフト）をはじめ多くのベンダーの製品と連携できるオープンなXDRだと訴える。これにより、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、認証、メールといったさまざま環境に設置されているセキュリティー製品などからログを収集、分析することで脅威をいち早く発見できる。豊富な製品と連携できる背景には、これまでMSSを提供する中で、多くのベンダーとテクノロジーパートナー契約を結んでいることや、顧客のセキュリティー戦略に合わせて監視対象製品を拡大してきたからだとする。また、OT環境に設置されている機器からログを収集できることも、他社のXDR製品との差別化につながっているという。オープンなXDRを提供することで「お客様は、XDRに合わせて周辺の機器を入れ替える必要がなく、これまでの運用方法を踏襲できる」と松田統括本部長は強調する。

　Taegisは、脅威インテリジェンスとAIを組み合わせて攻撃者の情報などを特定する機能や、ASM（Attack Surface Management）、SIEM（Security Information and Event Management）といったセキュリティー機能をプラットフォーム上で包括的に提供。SaaSのためユーザーはこれら機能をすぐに利用できる。
 
　XDRの場合、監視対象が広いため運用に不安を抱えるユーザーも少なくない。同社はTaegisを用いたMDRサービス「Taegis ManagedXDR」を提供。MSSを提供してきた強みを生かし、24時間365日の高度な運用監視を実現する。Taegisを導入した顧客の多くが、MDRサービスを合わせて利用しているという。

国内独自の支援を提供

　これまで同社は直販を強みとしてきたが、顧客獲得に向けてパートナー戦略を強化している。Taegisの提供に伴い、グローバルで新たなパートナープログラムを開始、トレーニングをはじめさまざまな支援を行っている。既存の国内パートナーに対する新プログラムの提案を進めており、現在は27社が新プログラムに移行した。加えて、国内独自の支援として、「Business Operation Center（BOC）」を設置し、パートナーからの問い合わせへの対応や、資料や情報の提供、同社の営業やSEによるサポートを展開する。パートナー営業・ソリューション技術統括本部の阿部祐亮・統括本部長は「BOCの利用は拡大傾向にある。今後もパートナーに寄り添って支援していく」と力を込める。

　新たなパートナー層として、MSSP（マネージドセキュリティーサービス事業者）の開拓にも注力する。セキュアワークス自身がMSSPだが、MSSの需要は高いことから、MSSP経由でも販売することで、中堅・中小企業まで顧客層を拡大する狙いだ。将来的には、ディストリビューターとパートナー契約を結び、地方のパートナーの拡充に取り組む。阿部統括本部長は「本年度（2025年1月期）中にパートナーを通じた売り上げの比率を50％以上にしたい」と目標を語る。