旅の蜃気楼

<e-Silkroad編 アジアのIT利用技術立国を目指せ>その9 若い世代が明日をつくる

2002/03/04 15:38

 

若い世代が明日をつくる

▼バンガロールで、日本向けソフト会社を経営する日印ソフトウェア社長・ギリさんは、日本をとても大切にしている。一昨年、両親への恩返しとして家族5人の大旅行を企画した。もちろん日本への旅だ。「100万円以上かかったけどね。日本をどうしても見てもらいたかった」。インドの100万円は高額である。ギリさんの日本への思いが伝わってくる。それだけに、日本人への期待は高くて厳しい。「日本の企業に営業にいきます。仕事の契約を決めたいんですが、なかなか結論がでないんです」。耳の痛い話だ。「この契約はだめですかと聞けば、今、検討をしている。もう少しまってくれ。いつまでたっても決定されないんです」。さらに耳の痛い話だ。「ようするに結論を出す人がいないんですよ」。諦め顔だ。

▼話はまだ続く。ようやく仕事の契約が実った。ソフト開発に入る。ところが客先からの発注内容は、「開発案件の基本設計があいまいなままなんです。途中変更はあたりまえで、そのためにかかった費用はもち出しになる。最悪のケースは開発期間延長にかかったコストは請求できない。こちらの責任になるんですよ」。インドのソフト会社はアメリカとの関係が強い。「アメリカはこの点、整然としているんです。日本もグローバルスタンダード化してほしい」。周囲にはアメリカと取り引きしている会社ばかりだ。ギリさんのボルテージはさらに上がる。この点について、日本のソフト開発技術者に事情を聞いた。ソフト開発は5段階構造だ。要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、稼動で仕様変更。この繰り返しだ。「要件設定は、やわやわ状態で発注する。いわれてみれば、ギリさんの話は思い当たりますね。でもここは日本だから、ソフト開発は話し合いがいつでもできる距離のほうがいいな」、という結論であった。しかし、コメントしてくれたそのソフト会社では、インド人や中国の開発部門での雇用を考えている。

▼インドのソフト開発会社の価格はどうなっているのか。バンガロールのJETROに勤める横井勲さんがインドのソフト会社の情報を送ってくれた。出典はE/Times1月29日号だ(表)。これを見た日本のソフト会社の幹部は、「安いですね」。日本語の壁、商習慣の壁、文化の壁を乗り越えれば、インドと日本の双方に、メリットがある。「e-Silkroad構想」はスタートしたばかりだ。日本はIT先進国だ。この国にして、構想の認知度はとても低い。バンガロールではどうか。訪問したSTPIの幹部の一人が「札幌のe-Silkroad に参加した」と親しげに語った。バンガロールの街でインターネット・カフェを見つけた。8台のパソコンに3人の若者が一生懸命、画面を見ていた。

▼日本の外務省は2月25日から3月8日まで、モンゴルのIT関連の官民キーマン8人を日本に招いた。25歳、26歳、30歳と若い世代だ。彼らは「E-オアシス構想」をもっている。明日は着々と接近している。

旅の蜃気楼(本郷発・BCN主幹奥田喜久男)
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