Letters from the World

深センが香港をしのぐ日

2002/06/10 15:37

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

 香港の空洞化も台湾と同様に目立ってきた。財政赤字はすでに英国から中国へ返還されるときに予想されていた。あの立派な香港空港も、英国が返還直前に香港に多額のツケを残して建設したものだ。

 香港の空洞化も台湾と同様に目立ってきた。財政赤字はすでに英国から中国へ返還されるときに予想されていた。あの立派な香港空港も、英国が返還直前に香港に多額のツケを残して建設したものだ。その割に利便性が悪い。われわれのように、台湾から珠江デルタ地区へ出張する場合、香港で時間を過ごす必要は最近全くなくなっている。しかし、香港空港は陸路や海路での中国アクセスの需要を全く無視しているようだ。

 百万ドルの夜景なども死語となった香港のビクトリアハーバーなどには決して立ち寄らず、ひたすら、台湾政府の不三通政策を恨みながら、深セン(シンセン)の国境に向かうことが多い。このように、香港でお金を落とさない台湾ビジネスマンに加え、週末を中国側で過ごしたり、生活必需品を中国側で購入するなど、香港では稼ぐが消費は中国側で、という香港住民が増えている。唯一の救いは、最近急増している中国からの観光客である。去年の1人あたりの消費額も日本人を遙かにしのぐ5000香港ドルだそうで、ダントツである。5月始めの中国の大型連休では、なんと50万人が中国側から香港に押し寄せ、税関がパンク状態になった。

 そこに居合わせた筆者は、深セン側から香港空港まで5時間のバスの旅を余儀なくさせられた。香港から台北までは1時間余りのフライトなのに。人口でも1人あたりの実質GDPでも、新センは香港を確実に抜きつつあり、豊かさが目立つ。街を走っている車も新車や高級ドイツ車が目につくようになった。このように、水の水位が平均化するように、香港側と深セン側の格差が限りなくゼロに近づいている。台湾も空洞化がすすみ、大陸での労働を模索する人も増えているそうだ。この際、台湾はリッチな中国人観光客を多く受け入れ、外貨を落としてもらったらいいのでは。(深セン発)
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