旅の蜃気楼

<e-Silkroad編 アジアのIT利用技術立国を目指せ>その24(おわり) キックオフ!

2002/06/24 15:38

週刊BCN 2002年06月24日vol.946掲載

 

▼ワールドカップの韓国対イタリア戦が終わった。テレビ桟敷で見ていて、韓国チームと12番目の選手の気迫に圧倒された。なぜかうらやましくも感じた。が、すぐインターネットを立ち上げ、googleで、東亜日報を検索して接続した。韓国チームが8強入りした時の街の喜びの光景が映像で流れた。花火を打ち上げ、鐘や太鼓を打ち鳴らしての歓喜が、池袋・要町にあるコラム子の自宅のパソコン画面に流れた。次にイタリアのヤフーに入った。うなだれた選手の表情が殉教者のようにも見えた。韓国語が、イタリア語が読めれば、もっと豊富な現地の情報が、NHKや明朝の朝日新聞の配達を待たなくても、堪能して、眠りにつける。

▼高電社の日韓自動翻訳を使えば、チャットで韓国の人に、「おめでとう」コールができる。「おめでとう。隣の友人」。なんてすばらしい時代ではないか。世界の人と、どこに居ても、コミュニケーションできる。日本列島の中だけで、自己完結する時代は過去のものになろうとしている。この新しい時代感覚で、明日を築こうとしている人たちが世界中にいる。しかし、不幸にも、2000年春のネットバブルの崩壊から、パソコン市場が踊り場を迎えた。さらに不幸は昨年9月11日のニューヨーク・WTCの崩落と続く。この事件を分水嶺にして、世界は大型のIT不況に突入した。現在も出口の見えない真っ暗な迷路のなかを歩いている。目はうつろ、うつむき加減で、朝の通勤電車に揺られて出勤する光景。リストラの嵐。組織の改編。M&A。社会のなかでの自分の居場所はどこにあるのか。必ずあります。

▼ぜひ、上海に出向いてほしい。北京の中関村を訪ねてほしい。韓国の仁川国際空港に降り立ってほしい。そこには気迫がある。よその国ばかりではない。身近な日本にもある。それは、「e-Japan計画」だ。この実現の先には、新しい需要を創り出す、生き生きとしたIT市場がある。蔓延している閉塞感からの脱出は、この計画の実行しかない。人の要求をすべて満足させる最大公約数的な解決策など、ありえないではないか。「e-Japan計画」を業界一丸となって、キックオフするときは今だ。これは他国のプランではない。私たちのプランなのだ。私のプランなのだ。私たちには、一日では築けない資産がある。それは、敗戦の焼け跡時代から、一生懸命GHQのコンピュータを使って築いてきた「利用技術」である。この知的財産に付加価値をつけて、シルクロードに向けて歩き出そうではないか。必ず陽は昇る。(旅の蜃気楼 要町発・BCN主幹奥田喜久男)
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