Letters from the World

Linux、デスクトップへ 様子見の米IT業界

2002/08/26 15:37

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

CHIBA SHOTEN,INC 千葉哲也

 ウェブサーバーやルータなどのネットワーク需要を端緒にその安定性や信頼性への実績と信頼を確立してきたLinuxは、いまや市場の全てのOSを凌駕する勢いをもつまでに成長した。現在のところはウィンドウズが独占を謳歌するデスクトップ市場だ。しかしLinuxGUIの安定化やLinux版OpenOfficeの発表などを契機に、この市場に向けたLinuxの本格的な侵攻が始まっている。

 米国最大の携帯電話会社ベリゾンワイヤレスは、社内開発部門向けデスクトップ環境をウィンドウズ+MSオフィスからLinux+OpenOfficeに切り替え、デスクトップ費用単価をそれまでの2万2000ドルから3000ドルに圧縮することに成功したと伝えている。いまだ一般ユーザーにはなじみにくいLinuxだが、プログラマーにとってその壁はないに等しい。

 この壁は、既に一般ユーザーにとっても限りなく皆無になりつつある。世界各地で既に始まっているウィンドウズからLinuxへのデスクトップOSの大々的切り替えが、米国や日本などの技術先進国でも堰を切って怒涛のように始まることが予想される。ワードやエクセルがもっている多彩な機能のうち、そのほとんどが一般ユーザーには利用されていない。

 この事実は、関係者による市場調査結果によりずいぶん以前から明らかになっていた。絶え間ない多機能付加価値化により、製品販売価格の高止まりを自己肯定化しようとするのがマイクロソフトのオフィス戦略だ。これがいつかは瓦解することは、マイクロソフト自身が一番よく理解しており、その打開策として打ち出してきたのが「.NET」だった。しかしいまだ姿の見えない.NETの普及とLinuxのデスクトップ進出は、極めて刹那的な時間との戦いに突入したようだ。.NETの出遅れが、数年後のIT市場の勢力分布図に大きな影響を与えかねない。(米サンノゼ発)
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