北斗七星

北斗七星 2002年10月21日付 Vol.962

2002/10/21 15:38

週刊BCN 2002年10月21日vol.962掲載

▼小泉首相ならずとも、「日本人は捨てたもんじゃないどころか、たいしたもんだ」という気分になった日本人のノーベル賞ダブル受賞。特にノーベル化学賞の田中耕一氏の、博士号をもたない、サラリーマンという略歴には驚かされるとともに、日本のサラリーマンは本当にたいしたものだと勇気づけられた人が少なくないのではないか。暗いニュースが多いなかで、久々の明るい、元気が出るニュースであった。

▼その一方で、田中氏の業績を正しく評価できなかった日本の学会、企業に対しては、厳しい批判も出てきている。リストラ、工場売却についても、「宝の山を捨ててはいないか」との指摘も出てきた。どうも、日本は悲観的になり過ぎて、身近にある宝に気がつかない、情けない状態に陥ってしまっていたようだ。米国の主張するグローバルスタンダードにほころびが見えてきた時期だけに、余計にこれまで否定されてきた日本の企業文化の中にも、見直すべき面があるのではないか。

▼確かにリストラを断行しなければならない場面もある。古い慣習で見直すべきものも少なくない。特に日本は、物事を変える前は声高に「変わらなければ」と叫ぶくせに、いざ大きな変化が起きようとすると警戒し、結局は何も変わらないことが多い。だが、少し早くあきらめ過ぎだったかもしれない――。大所高所から、自分の身の回りの身近な問題まで、考え直す機会ともなった日本人のノーベル賞受賞であった。
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