Special Feature

米IBM、ワトソン研究所を公開 現在の計算技術にニューラルや量子を融合

2025/08/11 09:00

週刊BCN 2025年08月11日vol.2071掲載

【米ヨークタウン・ハイツ発】米IBMは7月22~23日(現地時間)、日本メディア向けのプレスツアーで、ニューヨーク州の同社の製品工場や最新技術の研究所などを公開した。トーマス・J・ワトソン研究所では、AIや量子コンピューターなどの研究開発や先進テクノロジーを紹介し、ポキプシーの事業所ではメインフレーム事業の戦略と搭載機能などについて解説。コンピューティング領域を開拓してきた実績と次世代技術の研究を礎に、顧客目線で新たな製品を生み出し続ける姿勢を鮮明にした。
(取材・文/下澤 悠)
 
写真/IBM提供

「ビット、ニューロン、キュービット」をハイブリッド環境で提供

 ワトソン研究所では、ジョージ・トレウスキ・IBM Think Labプログラム・ディレクターが、同社のコンピューティングのビジョンを解説した。ビット(従来型のコンピューター)、ニューロン(AI)そしてキュービット(量子ビット、量子コンピューター)の三つの領域を研究・開発し、それらをハイブリッドでユーザー企業に提供することを強調。傘下の米Red Hat(レッドハット)のコンテナ基盤「OpenShift」を通じて、異なる3領域をあたかも一つの領域であるかのように感じられるかたちでユーザーに利用してもらうことを目指すと意気込んだ。
 
ジョージ・トレウスキ ディレクター

 従来型コンピューター領域での取り組みとしては、ラピダスとの協働による技術を用いた実際の半導体ウエハーなどを展示。AI領域では、2025年第4四半期にサーバー製品に搭載予定の「IBM Spyre アクセラレーター」の特徴を説明。推論という特定の用途に特化しているため、AIアプリケーションの実行でGPUよりも電力消費を大幅に削減できる強みがある。また研究段階の技術として、チップの中にニューラルネットワークを直接組み込む「アナログAI」などを解説。従来のデジタルの0か1ではなく、0から10の重みをデバイス内の回路の抵抗値としてマッピングする手法を用いる。材料などを一から確保する大きなプロジェクトのため開発は簡単ではないが、成功すればデジタルと比べ電力効率を50倍高められる技術だという。
 
半導体ウエハー

 量子コンピューターについては、最新の「IBM Quantum System Two」の実機を前にして構造などを説明。System Two内部には量子プロセッサー「Heron」が三つ搭載されており、ヘリウムを用いた冷凍機で絶対零度の環境を保つ。同機は理化学研究所にも導入されており、前世代機の「IBM Quantum System One」は東京大学などが川崎市に設置している。
 
量子コンピューターに搭載するプロセッサー
「Heron」
この記事の続き >>
  • メインフレーム資産をAIが理解し技術者の退職問題を解決
  • 29年までに誤り耐性量子コンピューターを提供

続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。

(登録無料:所要時間1分程度)

新規会員登録はこちら(登録無料)

会員特典

詳しく見る
  1. 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
  2. メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
  3. イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
    SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
  4. 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!
  • 1

関連記事

米IBM、メインフレーム「z17」を受注生産する工場をメディアに公開

日本IBM、医療従事者の業務変革を促進するソリューションを開発

日本IBM、サーバーの新製品「IBM Power 11」 新規顧客の獲得に注力

外部リンク

IBM=https://www.ibm.com/jp-ja