米国最大の投資信託会社であるFidelity(フィデリティ)は、ITの最先端を行く米国企業のなかでも特に際立って、ウェブサービスへの先行投資を鮮明にしている企業であるデータの安全性や、システムの振る舞いを記述するための規約策定がいまだ道半ばの状態であるために、ウェブサービス技術を企業の中核システムへ本格的に導入しようとする動きは、米国市場でもまだ皆無に等しい。

 このような状況の中でFidelityは、機種やOSの異なるさまざまなコンピュータシステムの総合体として成立している現在のIT環境を、統合的かつ有機的に結び付けて行くために採用し得る唯一有効な技術基盤として、ウェブサービスの採用を既に全社一義的に位置づけている。

 データ安全性への懸念については、まず当面、手がけなければならないイントラネット統合化を今後の拡張性を担保しながら進めて行けるだけでも、その本格的な採用に踏み出すだけの価値があるとしている。また、システム間を接続する際に、通信手順のすり合わせなどにいままでかかっていた時間と人材をほかの作業へ振り分けることが可能になったことが、劇的な経費節減に大きく寄与していると説明している。

 システムを社外と社内に分断し、社外に向けては現在のウェブシステムを当面運用しながら、社内をウェブサービス型に統一して行くことで、ウェブサービス型による全社的な統合にむけた最短距離を進んで行くとするFidelityの姿勢は、IT技術の本質を見極められる企業幹部の存在が、IT投資の戦略に如何に決定的な影響を与えるかを如実に物語る好例のひとつだと言える。

 多種多様な技術がすさまじい速度で次々に登場するIT市場では、その技術が往々にして未完成な状態で先行提案される場合が多い。確実な完成度をその提出や流布の前提としがちな日本型思考は、既に厳然として存在するIT技術の怒涛の進化の波を乗り越えようとするには、決定的な弱点を抱えていると言わざるを得ない。(米サンノゼ発)