Letters from the World

復興後のインフラ整備

2003/04/07 15:37

週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載

 イラク戦争の開始で、多くの産業が影響を受けると見られている。IT分野も例外ではない。インテルやIBMなどの大手は「影響は微々たるもの」と、いずれも強気のコメントだが、実際その見通しは希望的観測にすぎないと思われる。今回の戦争が、石油に代表されるいくつかの魅力的な資源の利権が絡んでいるのは周知の事実である。しかし、米英にメリットが大きいとされるこの戦争の終結後、日本はどのような利益を享受できるのだろうか。

 言葉だけの安易な反戦と及び腰な後方支援の結果は、戦後復興の資金援助だけを担当させられ、国際社会での地位は低いままではないだろうか。せっかくのチャンスに「日本かくあるべき」というビジョンを誰も示せないのが非常に残念だ。IT関連でも、セキュリティ分野や各種の情報処理など、日本が反戦の姿勢を保ちつつ、かつ社会的に尊敬を得る手段はいくらでも残されているはずだ。復興後の携帯電話のインフラ整備などは、まさに日本の面目躍如になるだろう。にも関わらず、そのような動きが官民のいずれからも起きないのはなぜだろう。

 インターネットにはないはずの国境線が、なぜか厳然として存在しているかのようである。これでは戦争終結後も利益を享受できないばかりか、国家の地位も低いままで反戦運動もその重みを失ってしまいかねない。筆者の自宅近くには、オンライン生花販売大手の1-800-FLOWER.COM社の本社ビルがある。献花など、戦争による売り上げ増を見込んでいるのではと思ったが、同社のジム・マッキャンCEOからは取材を拒否された。しかし、同社の受付嬢は「こんな時だからこそ生花を扱う仕事で良かったと思います」と述べた。自社の業績を伸ばしつつ、しかし心優しく、かつ明確な反戦の姿勢に、うらやましいものを感じる。日本は政府も民間企業も、もっとしたたかに、そしてもっと力強くなって欲しいと、心から願う次第である。(ニューヨーク発)
  • 1